人生後半戦になると、下り坂をただ受け入れるしかないのか。作家の楠木新さんは「野村克也監督が、スポーツ選手が30代で直面する“老い”の問題に指針を示している。これは人生後半戦、あるいは定年後の会社員にも示唆に富む教えだ」という――。

※本稿は、楠木新『定年後、その後』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

人生後半戦は3段階

他球団を戦力外になった選手に活躍の場を与え、再活躍させることで「野村再生工場」の異名をとったプロ野球の野村克也監督は「プロ野球選手の寿命は長くても15年から20年なのだから、第二の人生に備え、野球を通じて自分を磨かないといけない」と語っている。

さらに野村監督は、年齢による選手生活の変化についても触れて、プロ野球選手の18歳から26歳は「がむしゃら時代」、27歳から30歳は「知恵の時代」、31歳以上は「人間性を問われる時代」と年代別に整理をした。そして、年齢に応じて自分を変えて、得意なことをやるべきだと強調している。

年齢は異なってくるかもしれないが、これは会社員でも同じではないだろうか。

スポーツ選手が30代で直面する老いの問題は、会社員も向き合わなければならない課題である。定年して70歳くらいになって本格的な老いに直面した場合には、従来の「努力して成長する」という考え方だけではうまくいかない。年齢に応じた対応が求められるのだ。

椅子に座って時計を眺める老人
写真=iStock.com/Deagreez
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「死ぬこと」から逆算して人生を考え始める

私はこの20年間、組織で働いている会社員を中心に多くの人から話を聞いてきた。

野球選手の現役時代を3段階に分ける野村監督の真似をするわけではないが、私も人生後半戦(45歳以降)は、3つの段階に分かれると考えている。①45歳から59歳、②60歳から74歳、③75歳以降である。

そもそも人生後半戦とはどういうことか。何歳からと定義すればよいのか。私は、死ぬことから逆算して人生を考え始める「40代半ば以降」からだと考えている。

それまでの人生は、右肩上がりで成長するイメージだ。しかし親との死別や介護の心配が増すことなどで自らの後半生を意識するようになる。それが40代半ば以降ではないだろうか。また、若い時とは違って体力の衰えを自覚し始め、会社内でのポジションにおいても先が見えてくる。

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