NHK朝ドラ「ばけばけ」のモデルである小泉八雲とセツは史実ではどんな関係だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「当時の時代背景として、没落士族の娘が芸妓や娼妓、また妾になる例は少なくなかった。それは小泉セツも同様だった」という――。
小泉セツ、1888年撮影
小泉セツ、1888年撮影(画像=CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

NHK朝ドラで描かれた「女中騒動」

松江中学の英語教師、レフカダ・ヘブン(トミー・バストゥ)は、滞在していた花田旅館を出て近くの一軒家に移り、身の回りの世話をしてくれる女中を所望した。

給金は月額20円。花田旅館の女中の月額90銭とは雲泥の差があり、女中探しを請け負った同僚の錦織友一(吉沢亮)にしても、ヘブンがラシャメン(日本在住の西洋人の妾)を求めているのだと思い込んだ。声をかけられていったんは断りながら、物乞いになった実母の雨清水タエ(北川景子)を救うために、覚悟を決めて引き受けた松野トキ(髙石あかり)も、錦織と同じように認識していた。

ところが、第7週「オトキサン、ジョチュウ、OK?」(11月10日~14日放送)で、意外な展開になった。

トキの「職場」に家族、すなわち養父の松野司之介(岡部たかし)、養母のフミ(池脇千鶴)、養祖父の勘右衛門(小日向文世)が踏み込み、トキは借金返済のために仕方なくラシャメンになったと打ち明けた。これに対し、騒ぎを耳にして錦織と一緒に駆けつけたヘブンは、娘がラシャメンになったために松野家の人々が怒っていると聞かされ、怒鳴り出したのである。「私のことをそんな男だと思っていたのか。ふざけるな!」。