きちんと休みを取るようにしているのに、休み明けも疲れているのはなぜだろうか。独立思想家の山口周氏は「疲れには肉体的、物理的、精神的なものがある。これらを分けて考え“上手に休んでいる”のが、一流の人たちだ」という。タレント・女優の長濱ねる氏との対談をお届けしよう――。

※本稿は、山口周・長濱ねる『未来を照らすコトバ ビジネスと人生、さらには社会を変える51のキーワード』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
※上記は、山口氏が「図書館長」、長濱氏が「図書館司書」としてさまざまな書籍を紹介するJ-WAVEのラジオ番組「NTT Group BIBLIOTHECA 〜THE WEEKEND LIBRARY〜」から生まれた書籍です。

砂浜で寝転ぶ男性
写真=iStock.com/yoshiurara
※写真はイメージです

約8割の人が「休んでいるのに疲れている」

【山口】「働き方改革」が始まったのは2019年の4月。それ以降のことを統計で見ると、労働時間も減っているし、休暇も取りやすい環境になってきているようです。でも一般社団法人日本リカバリー協会が2024年に発表した調査によると、日本では「元気」って回答した人が18.2%、「疲れている」と回答した人が81.8%なんです。

どうですか、ねるさんは?

疲労状況2017−2023推移(全体)
出典:山口周・長濱ねる『未来を照らすコトバ』(祥伝社)

【長濱】疲れています――。

【山口】図書館もなかなか大変だよね(長濱氏は図書館司書として勤務している設定)。

【長濱】でも、休み明けも疲れているんです。

【山口】「疲れてない」っていうのはいつなんですか?

【長濱】あまりないのかな――。上手に休めてないんだろうな、休み方が下手なんだなと思いますね。

【山口】ちなみに僕の場合、元気か疲れているかっていうのは、まさに状況次第です。ねるさんがおっしゃる通り、「休日明けだから疲れてないのか」というと必ずしもそうじゃない。僕は365日全部休日と言えば言える人なので、休日の過ごし方も何もないんですが。

今回紹介する『世界の一流は「休日」に何をしているのか――年収が上がる週末の過ごし方』(クロスメディア・パブリッシング)の著者、越川慎司氏いわく「疲れているのは、休み方が下手」なんです。

「休日」と休息」の違い

【山口】ちょっと前のデータになりますけど、2014年の厚生労働省の調査によると、日本人の休日の過ごし方のトップ3は、男女ともに1位「何となくネットを見る」、2位は「何となくラジオやテレビを見る」、3位は「何もせずごろ寝する」でした。これはいかがなものでしょうか?

【長濱】私も以前、メルボルンに1人で旅行した時も、気づいたらホテルでお昼2時から夜の9時ぐらいまでずっとYouTubeを観ていました。日本人の休日の過ごし方に共感します。

【山口】この本に書いてあって、確かにその通りだなと思うのは、「休日と休息は違う」ということですね。「疲れ」っていろいろな種類があるわけですよね。筋肉の疲れとか精神の疲れとか、糖分がちょっと減ってエネルギーが減っている状態とか。疲れにもいろいろな側面があるわけで、「その休み方では、身体の疲れとか物理的な疲れは取れるかもしれないですけども、心の疲れは取れないですよね」ということもある。

僕、高校時代からの親友が一人いるんですけども、彼はランナーで休日に100キロとか走るんですよ。意味わからないでしょう? 平日に仕事しているんですよ。金融機関でかなりハードな仕事をやっているんですよ。だけど、「休日が待ち遠しい」「今度100キロマラソンに出るんだ」って言って目が爛々としているんです。

ですから「休みを取る」というのは、ただ単に「休息する」ことではない。人によっては「100キロ走る」ことが、リフレッシュという意味での休みになるんです。