夫婦関係を良好に保つためには、どうすればいいのか。『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか?』(講談社+α新書)を書いた夫婦問題研究家の岡野あつこさんは「パートナーに対する不満を溜めないことが大切だ。ただ、離婚を考えるほど思い悩んでいる場合は、『思考実験』をすることを勧めたい」という――。
キスをしているカップル
写真=iStock.com/Andrii Lysenko
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朝帰りでも「不倫なんてあり得ない」と信じたワケ

「今晩は遅くなる。もしかすると泊まり込みになるかもしれない」

千葉県に住む日下部理恵さん(仮名、42歳)は、夫の日下部光一(仮名、48歳)さんからそう告げられても、おかしいとは思わなかったそうです。

「夫は中学校の教諭をしていました。学校の先生といえば、人手不足のせいでいまや激務の代名詞ともいえる仕事。『定額働かせ放題』と揶揄されることもあるくらいです。しかも夫はその春から学年主任も務めていてずっと忙しそうでした。心配こそすれ、疑ってはいませんでした」

学期末を迎え、テストの採点や進路指導、部活動の世話などで目の回るような忙しさだと理恵さんに説明すると、夫の光一さんは仕事に出かけました。

その夜、夫は帰ってきませんでした。

「事前に聞いていたとはいえ、夫が朝帰りしたわけですから、さすがに少しは不倫の可能性を考えました」と理恵さんは言います。

ただ、同時にこうも思っていたそうです。

「夫は中年だしそんなにモテるとも思えません。そもそも、学校の先生といえばまじめなお仕事なので、不倫なんてあるわけがないと思っていました」(理恵さん)

「まじめな職場だから大丈夫」と理恵さんは思いこんでいましたが、それは間違った先入観だったかもしれません。一般にまじめとされる職業でも、蓋を開けてみると実は不倫が多かった、という調査結果があるのです。

イギリスで3800人を対象に行った調査によると、不倫の多い職業の第2位は「教師」で、13.7%が不倫を経験していました。

ちなみに第3位は「医療関係者」で、不倫経験率は12.5%と高い水準でした。医療も社会的に重要な「まじめな仕事」の一つですので、少々意外な結果かもしれません。

中学教師の夫には「環境」が整っていた

Ashley Madisonという不倫を目的とした出会い系サイトが、2018年に1000人以上のユーザーを対象に行った調査によると、サイトを利用する人の職業として最も多かったのは「医療関係」で、実に約23%にも上っていたそうです。

医療は人の生命を預かる責任重大な仕事ですが、その分ストレスも多く激務になりがちです。また患者を含め多くの異性と接触する機会があるほか、学会発表などで出張も多かったりと、時間の都合をつけやすいことも医療関係者の不倫が多い理由でしょう。

理恵さんの夫、光一さんも学年主任の重責を担い、人手不足によって激務を強いられていました。学校には異性の同僚も多く、保護者のほかいろんな業者さんも出入りしています。理恵さんが知らないうちに、不倫に走りやすい環境が整っていたわけです。

「それから夫はちょくちょく朝帰りするようになりました。最初は2カ月に1度くらいでしたが、だんだん回数が増え、毎週金曜日は必ず泊まり込むようになったので、さすがに怪しいと思いはじめました」(理恵さん)