「静かで安定した日本」の評価が変わろうとしている
「初の女性首相」として大きな注目を集めた高市早苗政権。しかし、英語圏メディアの焦点はそこにない。彼らが注視しているのは、「日本という国の立ち位置そのものが変わり始めたのではないか?」という、より大きな変化である。
台湾発言、財政運営への懸念、働き方と“Karoshi(過労死)”文化の象徴化、政治スタイルのキャラクター化……こうしたテーマが、これまでの政権交代とは比べものにならない量で、同時に報じられている。国際社会は今、「静かで安定した日本」という従来のイメージでは説明できない動きを読み取ろうとしている。
だが、その変化の大きさを最も過小評価しているのは、実は日本自身かもしれない。
国内では支持率や話題性として消費されがちな出来事が、海外では安全保障や市場、民主主義の行方を占う重要なシグナルとして受け止められている。
本稿では、英語圏メディアの論調を基に、日本の存在感の高まりが何をもたらし、どんなリスクを伴うのかを考えていく。
台湾問題で世界が驚いた、日本外交の“揺れ”
「日本は、世界が台湾について考えるべき方法を変えた」
ワシントンD.C.を拠点とする超党派のシンクタンクFoundation for Defense of Democracies(FDD)のクレイグ・シングルトン氏が、NYタイムスに寄せたオピニオン・エッセイのタイトルだ。
問題の核心は、日本が長年維持してきた「戦略的曖昧さ」を、初めて明確な言葉で破った点にある。高市首相は、中国による台湾への攻撃や封鎖が、日本の「生存への脅威」になると述べた。この言葉について、記事はこう説明する。
「日本の存亡に関わる脅威とは、東京が海外に軍隊を派遣することを可能にする法的基準である」
つまり発言は、単なる認識表明ではなく、「台湾有事=日本の軍事関与の可能性」を初めて公に明文化したものだと受け止められた。

