円安のさなかの「21兆円経済対策」に海外は慎重
前段で述べたように、海外はすでに日本の財政全体に強い警戒感を示している。
ここで注目したいのは、その中でも特に「政策の中身」が、国際市場からどう見られているかだ。
海外メディアの多くは、高市内閣の経済政策を単なる景気対策ではなく、「国内世論を強く意識した財政拡大」として捉えている。
ロイター通信は、高市政権が打ち出した約1370億ドル(約21兆円)規模の景気刺激策について、「国債利回りを押し上げ、円をさらに弱体化させるリスクがある」と警告。重要なのは、インフレと円安が収まらない中で、財政拡大だけが先行しているとみられている点だ。
そのため市場では、2022年に英国で起きた「トラスショック」が引き合いに出されている。就任直後のトラス首相が国内向けの大規模減税と景気刺激を打ち出した結果、国際市場の信認を失い、株・債券・通貨が同時に急落し、わずか49日でスピード辞任に追い込まれた出来事である。
海外では、日本についても「日本版トラスショック」の可能性も語られ始めている。
「内向きの政治」が海外に与える影響
さらに警戒されているのが、物価高対策の給付型支出だ。おこめ券などの具体的な政策名には触れていないが、海外報道では、こうした支出がポピュリズム政治に典型的な「短期的な人気取り」ではないかという見方が、繰り返し示されている。
前出の英国テレグラフ紙は、こう締めくくっている。
「かつて懸念されていたのは、日本が不安定な世界から巨額の資金を引き揚げる可能性だった。しかし今、懸念すべきなのは、日本の国内政治そのものが、そうした行動を日本に強いるかもしれない点だ」
ここで問題視されているのは、日本の政策が内向きの政治論理で決まり、それが世界市場に波及するリスクである。
国内では支持率の上昇として評価される動きが、海外では市場リスクとして警戒される。このズレこそが、いま国際社会が日本に向ける最大の不安要因だ。

