衆院選で主要政党はそろって「消費税減税」を掲げている。それで本当に物価高は収まるのか。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「消費税を下げるだけでは効果は小さい。物価高の主因はコメ価格の高騰なのに、政治もマスコミも争点にしないのは大問題だ」という――。
第51回衆院選が公示され、第一声を上げる高市早苗首相(自民党総裁・中央)。左は日本維新の会の吉村洋文代表、右は藤田文武共同代表=2026年1月27日午前、東京・秋葉原駅前
写真=時事通信フォト
第51回衆院選が公示され、第一声を上げる高市早苗首相(自民党総裁・中央)。左は日本維新の会の吉村洋文代表、右は藤田文武共同代表=2026年1月27日午前、東京・秋葉原駅前

不思議な選挙

ある主要新聞社からコメと総選挙について取材された。「これだけコメの価格高騰・高止まりが問題になっているのに、なぜ選挙の争点にならないのか」というのだ。

私は逆に「コメを争点化しないマスコミに問題があるのではないか」と質問した。新聞社の人は、「超短期決戦となった今回は時間がなかったので準備が不十分だった」と苦しい言い訳をした。

しかし、考えてみるとおかしな話だ。

物価対策が大きな争点になっているといいうのに、その対策として“チームみらい”を除く各党がこぞって掲げているのは(食料品の)消費税をゼロにすることだけだ。皆が同じ政策を掲げるなら争点にならない。せいぜい財源を検討しているかどうかの違いだけだが、検討しているという政党も確かな財源を示しているのではない。そもそも、キャビア、松坂牛、高級ワインを含めた飲食料品の負担が8%少なくなったからといって、一般の消費者はどれだけ利益を受けるのだろうか。

今の物価高は消費税が引き起こしているのではない。コメなのだ。

2025年平均の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数が前年比3.1%上昇し、前年の2.5%から拡大した。コメをはじめとする食料の高騰が影響した。生鮮食品を除く食料は7.0%上昇した。このうち米類は67.5%上昇と、1971年以降で最大の伸び率となった。日銀のインフレ目標はコメのおかげで達成されたと言われるくらいだ。消費者物価指数を最も押し上げているのはコメなのに、どの政党も問題視しない。これで生活者ファーストなどといえるのだろうか?

精米5キログラムで、2年前までは2000円だったコメが今は4200~4400円もしている。4200円の税込み価格のうち消費税分は311円に過ぎない(経済学的に言うと、消費税は生産者も負担しているので、消費税ゼロによる価格下落額はこれより少ない)。これをなくすことよりも2000円に戻すことを真剣に考えるべきではないか? コメは主食ではないのか。