「キャラクター政治化」する日本

さらに海外メディアの関心を集めているのは、政治そのものが“キャラクター消費”の対象になりつつある日本の変化だ。

「高市氏は政治ではなく、そのスタイルと“働いて働いて”というスローガンで支持を集めている」という見出しはAP通信の記事だ。

記事は、国内初の女性首相である高市氏の仕事着やファッションが話題となり、若い女性の間で「Sana-katsu(サナ活)」と呼ばれる動きまで生まれていると紹介している。

政治家の装いが、アイドルやインフルエンサーのように消費される現象は、これまでの日本政治ではほとんど見られなかった。

英ガーディアン紙はも、「働いて、働いて」というキャッチフレーズが日本の今年の流行語に選ばれたことを報じつつ、日本社会に根付く「Karoshi(過労死)」の問題を同時に取り上げた。ここから浮かび上がるのは、高市氏が単なる首相ではなく、賛否を巻き込む“政治的ポップアイコン”として扱われている姿だ。

合理性より「国内向けのわかりやすさ」を重視していないか

こうした報道を見て、多くのアメリカ人が連想するのがトランプ大統領である。トランプ政治の特徴は、政策そのもの以上に「キャラクター」や「語り口」が注目され、支持者が熱狂する点にあった。高市氏にも、スタイルが政策を超えて、SNS時代に最適化された言語戦略で支持を集めるという共通点が見られる。

象徴的なのが、高市氏が総裁選直前に引用した「奈良公園で観光客が神聖な鹿を蹴った」という情報だ。真偽を巡る議論を超えて、怒りと反発がSNSからメディアへと一気に拡散した。この展開は、トランプ氏が選挙戦で「ハイチ移民が犬や猫を食べている」という情報を拡散したケースと酷似している。

真実かどうか、賛成か反対かにかかわらず、怒りが怒りを呼び、情報が爆発的に広がる「Rage bait(レイジ・ベイト)」は、英国のオックスフォード大学出版局の「今年の言葉」にも選ばれた。こうした手法は、外国人や移民への不安を抱く有権者の支持を一気に引き寄せる一方で、社会の分断を深める。その分断そのものが、政治的なエネルギーに転化されている。

これに対し海外メディアからは、政策が合理性ではなく「国内支持をどう動員するか」で決まる危険性が指摘されている。国内向けに発せられた「強さ」や「わかりやすさ」のメッセージが、国際社会では「不安定化のシグナル」と受け取られている点も見逃せない。