金融市場までもざわつかせる高市政権

高市政権が国際社会をざわつかせた理由は、安全保障だけではない。むしろ海外の金融市場がより強く反応したのは、日本の財政リスクだった。

高市政権の誕生とほぼ同時期、日本の国債市場に異変が起きた。12月3日、10年物国債の利回りが約17年ぶりの高水準に達したのである。長年「世界で最も静かな債券市場」と見なされてきた日本が、この瞬間から突然、「市場を揺るがしかねない国」として見られ始めた。

海外メディアの反応はストレートだった。英国の保守系紙テレグラフは、

「日本の“偽サッチャー”が債券市場を破壊する」という衝撃的な見出しを掲げた。

国際社会が懸念する「日本ショック」

国債の利回りが上がるということは、国がこれまでより高い利息を払わなければ資金を調達できなくなる、という意味だ。市場が、日本という国家とその財政に対し、静かに疑問符を付け始めたことを示している。

背景にあるのは、日本の特殊で不安定な財政構造だ。政府債務はGDPの約260%と、先進国で突出して多い。そのうち約半分は、日本銀行が買い支えてきた「動かない国債」で、市場のルールが働きにくい状態が続いてきた。

この状況で高市政権は、防衛費の大幅拡大を政策の前面に掲げた。財源は、増税か国債発行しかない。しかし増税は世論の反発が強く、政治は国債に頼る可能性が高い。市場は、その現実を冷静に見ている。

さらに状況を難しくしているのが、止まらない円安だ。円が弱いままでは、国債の利回りが上がっても、外国人投資家は為替損を被る。「利息では儲かるが、為替で損をする」という最悪の組み合わせになる。

結果として、日本国債は今、「金利は上がるが、安心して買えない」という、きわめて危うい段階に入りつつある。国際社会が「日本発の市場ショック」を警戒し始めている理由は、そこにある。