高収入の夫とタワマンに暮らしていた専業主婦の妻は、なぜ夫と別居することにしたのか。離婚や男女問題に詳しい弁護士の堀井亜生さんは「タワマンは周辺環境も含めた利便性の高さが魅力だが、住んでみると意外な欠点があり、それが夫婦間の問題につながることもある」という――。
※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。
エリートサラリーマンと結婚しタワマンに入居
会社員A子さん(32歳)は、お見合いで知り合った5歳年上の夫と結婚しました。夫はエリートサラリーマンで、年収は1500万円超。夫が「結婚したらここに住みたいと思っていた」と新居として提案したのは、東京ベイエリアに建つタワーマンションでした。
広い埋立地に建つタワマンは、近隣にスーパーマーケットやホームセンターが入った複合商業施設、ファミレスやカフェ、広い公園、病院が揃った立地で、整備された区画に一通りの施設が並ぶその様子は、さながら未来都市のようでした。教育関係は公立小学校や中学校、それにグローバル教育が売りの国際系の高校が近くにあります。
東京の下町に生まれ育ったA子さんにとっては、とても新鮮な光景でした。ここに住めば生活や子育てのすべてが賄える、子どもはきっと英語が堪能に育ち、いずれは海外留学も……。そんな夢を抱いて、A子さんは夫がローンで購入したタワマンに入居しました。
「主婦になって支えてほしい」という夫の希望で、A子さんは結婚と同時に退職して専業主婦になりました。
「夢のタワマン生活」のはずが深夜まで掃除の日々
住まいはタワマンの20階以上で、夜にはベイエリアの夜景が見渡せます。買い物は近くのスーパーで、休日には公園を散歩……。
絵に描いたようなタワマン生活が始まりましたが、予想外の問題がありました。夫が家の汚れにとても厳しいのです。
夫は毎日仕事で遅く帰ってきた後、家の中をくまなくチェックします。真っ白な壁や真新しいフローリングの床に汚れがないかを調べて、汚れが見つかるとA子さんに掃除のやり直しを命じます。A子さんが掃除をする間、夫はお風呂に入り、ゆっくりと晩酌をします。深夜まで掃除を続けて、夫の再チェックに合格して初めてA子さんは就寝できます。