雇用者の7割が働く中小企業の賃上げが進まない

今年の春闘も大幅な賃上げで決着するところが増えている。連合が3月21日に発表した第2回集計結果によると、ベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率は5.40%と、昨年の第2回集計時の5.25%を上回り、34年ぶりの高水準を維持した。

一方で、組合員数300人未満の中小組合の賃上げ率は4.92%と5%に届かなかった。連合は今年の春闘では「5%以上の賃上げ」を要求すると共に、中小については「6%以上」の目標を掲げている。業績が好調な大企業の賃上げが進む中で、雇用者の7割が働く中小企業の賃上げが進まないことが大きな問題となっている。

総務省が発表した2月の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた指数が前年同月に比べて3.0%上昇した。コメの価格が大幅に上昇するなど、食料品の値上がりが激しく、消費者の生活に打撃を与えている。

もちろん、数字の上では、物価上昇を上回る賃上げが実現しているわけだが、生活者の感覚としてはますます生活が厳しさを増している。いったいこれはどうしたことなのか。

財務省の外観=2025年2月4日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
財務省の外観=2025年2月4日、東京都千代田区

人件費を価格に転嫁できていない中小企業

ひとつは大企業はともかく、中小企業や零細事業で働く人たちの給与がなかなか上がらないこと。連合の芳野友子会長も記者会見で「中小は労務費を含めた価格転嫁が重要だ」と述べていたが、大企業の下請け企業などが思うように納入価格を引き上げてもらえないという実態がある。値上げを受け入れてもらえても、原材料価格やエネルギーコスト分を上乗せするのが精一杯で、中小企業で働く人たちの人件費を価格に転嫁できていないわけだ。

そうは言っても人手不足の中で従業員を確保するためには一定の賃上げは必要で、ここ数年は中小企業経営者も賃上げを進めてきたが、そろそろ限界だという声も聞こえる。

政府は、発注者が不利な取り引き価格を一方的に決める行為を禁止することなどを盛り込んだ「下請け法」の改正案を3月11日に閣議決定した。発注者が受注者と協議をせずに受注者にとって不利な取り引き価格を一方的に決めることを禁止する内容で、物流業界での荷主企業と運送業者の間の委託業務も含めるとされている。