「国民負担率」がなぜか低下した理由

国民の負担はどんどん増えているわけだが、これを示す数値がある。「国民負担率」というもので、租税負担と社会保障負担の合計が国民所得の何%を示すかという指標だ。毎年2月に財務省が公表しているが、今年は予算成立が遅れた関係か、3月にずれ込んだ。

実は、その「国民負担率」の2023年度の実績数値が8年ぶりに低下した。46.1%と、過去最高だった22年度の48.4%から低下したのだ。前年と同率だった年度はあったが、低下したのは2015年度以来だ。毎年、国民負担率が過去最高を更新し続けてきたことを考えると、画期的な出来事だと言える。

だが、どうして負担感が増えているという消費者の感覚とは食い違った数値が出てくるのか。このズレは何が原因なのか。

前述の通り、国民負担率の計算は分母が国民所得、分子が租税負担と社会保障負担だ。率が低下するには分子が小さくなるか、分母が大きくなるか、2通りの要因があり得る。

実は、2023年度の実績で、国民所得は409.6兆円から437.8兆円に6.8%も増えているのだ。つまり分母の国民所得が大きく増えたことで、国民負担率は低下したのである。

円マークが描かれた木製ブロックを縦に積み上げている手元
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

「国民所得」には企業の所得も含まれる

決して分子の租税負担と社会保障負担が減ったわけではない。租税負担は120.4兆円から122.1兆円に1.4%増加、社会保障負担も77.8兆円から79.6兆円に2.3%増えている。租税負担と社会保障負担の合計では198.2兆円から201.7兆円に1.7%、金額にして3.5兆円増えているのだ。つまり、国民負担「率」は低下したが、国民負担「額」は増えたということだ。3.5兆円と言えば、消費税1.5%分に相当する。

もうひとつマジックがある。「国民所得」は個人の所得だけでなく企業の所得も含まれていることだ。企業の儲けが増えても、その分給与が払われなければ、見た目の国民負担率の低下と個人の実感はかけ離れたものになる。企業収益の何%を給与として払っているかを「労働分配率」と言うが、これは低下を続けている。