約4.3人に1人が発症するとされる
脳卒中は、脳の血管に異常が生じ、脳の一部に血液が届かなくなったり、出血したりすることで起こる病気の総称です。現代社会において、脳卒中は多くの人々にとって重大な健康リスクとなっています。日本では、約4.3人に1人が一生のうちに脳卒中を発症するとされています(Valery Feigin et al. “Global, Regional, and Country-Specific Lifetime Risks of Stroke, 1990 and 2016” 2018)。
脳卒中は個人の健康だけでなく、企業や社会にも大きな影響を及ぼします。医療費やリハビリ費用といった直接的なコストに加え、休職や労働力の喪失による生産性の低下といった間接的な損失も発生します。
一般的に心筋梗塞などの心疾患発症後の復職率は約80%、脳卒中後の復職率は約50%といわれており、脳卒中後の復職率が低いことが分かります。特に働く世代においては、脳卒中による休職や復職困難が、キャリアや生活に深刻な影響を及ぼします。
40歳を過ぎると発症が増える傾向
脳卒中は高齢者に多い病気というイメージがありますが、実際には働く世代の「推計患者数」は全体の16%を占めており、特に40歳を過ぎると発症が急増する傾向にあります(厚生労働省「令和5年患者調査」2024)。脳卒中を含む脳血管疾患で治療や経過観察のために通院している患者数は、日本国内で推計174万人に上り、そのうち約17%(29.5万人)が働く世代であることが報告されています(厚生労働省「事業場における治療と診療の両立支援のためのガイドライン」2024)。
また、一度発症すると1年以内の再発率は約5%、累積再発率は5年で35.3%、10年で約51.3%に達すると言われており(J Hata et al.“Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community: the Hisayama study” 2005)、再発防止も重要な課題です。診断別にみると、くも膜下出血、脳出血、脳梗塞の10年再発率はそれぞれ70.0%、55.6%、49.7%で、くも膜下出血の再発リスクは特に高くなっています。