長時間労働は脳卒中のリスクを高める

最近の研究によると、働く世代の脳卒中では、「低い身体活動」と「高血圧」は最も重要なリスク因子であり、それぞれ全脳卒中の59.7%、27.1%を占めていた、という報告もあります。同研究において、高血圧、脂質異常症、糖尿病、冠動脈疾患、喫煙、過度の飲酒、低身体活動、肥満の8つのリスク因子を全て合わせると、全脳卒中の78.9%を説明できる、ということも示されました(Annette Aigner et al. “Contribution of Established Stroke Risk Factors to the Burden of Stroke in Young Adults” 2017)。他にも、高血圧の人は脳卒中リスクが約2倍、糖尿病の人は約2~3倍になるとも言われています(三浦克之「疫学のポイント」2015、立花久大「糖尿病と脳卒中」2014)

長時間労働も脳卒中のリスクを高めることが明らかになっています。ある研究では、労働時間が55時間/週以上の場合、対照群の30~45時間/週と比較して、脳血管疾患のリスクが1.21倍になることが報告されました(Marc Fadel et al. “Association Between Reported Long Working Hours and History of Stroke in the CONSTANCES Cohort” 2019)。

ラップトップ作業でストレスを受けたビジネスマン
写真=iStock.com/Thinnapob
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「脳血管が破れるタイプ」と「脳血管が詰まるタイプ」がある

脳卒中は大きく2種類に分類されます。

1.脳血管が破れるタイプ(出血性脳卒中)
・脳出血:脳内の細い血管が破れて出血
・くも膜下出血:脳動脈瘤が破裂し、脳の表面に出血

2.脳血管が詰まるタイプ(虚血性脳卒中)
・脳梗塞:動脈硬化などにより血管が詰まり、血流が遮断される

脳卒中は、発症する部位によって症状が異なりますが、共通して以下のような症状が突然現れるのが特徴です。

・運動障害:片側の手足や顔が急に動かなくなる、またはしびれる。
・言語障害:言葉がうまく出せなくなる、他人の言葉が理解できなくなる。
・視覚障害:片目が見えなくなる、物が二重に見える、視野の一部が欠ける。
・その他の症状:未経験の激しい頭痛、平衡感覚の異常により立つ・歩く動作が困難になる
・重症の場合:意識がもうろうとする、または失うことがある。