賃上げ分がそのまま手取り賃金の増加にはならない
現実には発注者側が提示した価格を受け入れなければ、仕事をもらえないという力関係にある中小企業が圧倒的に多く、この法律がどれだけ効果を生むかは不明だ。さらに、この改正法案では「下請事業者」という言葉を「中小受託事業者」に、「下請代金」を「製造委託等代金」に変えることが盛り込まれているが、「下請け」という言葉を無くしたからといって「下請け」が消えるわけではない。中小企業庁や公正取引委員会が躍起になって下請けイジメの撲滅に力を注いでいるが、人件費分まで含んだ価格の引き上げはそう簡単ではない。
また、こうした価格転嫁ができたとして、大企業はそれを最終価格に転嫁するわけで、そうなると物価上昇に弾みがつくことになる。賃上げをしても物価上昇がさらに進めば、生活は楽にならない。
もうひとつ、大きな問題が、賃上げ分がすべて、可処分所得つまり手取り賃金の増加に結びつかないことだ。
「子ども・子育て支援金」に「防衛特別所得税」
岸田文雄前首相が目玉政策として掲げた「子ども・子育て支援金」の原資は社会保険料へ上乗せすることに決まっていて、2026年度に月額平均250円、2027年度に350円、2028年度以降450円が上乗せされる。これはあくまで平均額で、会社員などは2028年度に月800円、年間1万円近くの負担増になる。しかも同額を雇用している企業なども負担することになっている。
当時の岸田首相が、賃上げで所得が増えるので、実質的に負担は増えない、と強弁していたのが記憶に新しい。賃上げ分が社会保険料に回ってしまっては、一向に生活が豊かになるどころか、物価上昇の影響をモロに受け続けることになる。
さらに、5年間で43兆円という防衛費を賄うための増税も決まっていて、2027年1月からは「防衛特別所得税」が課される方向だ。所得税に1%の付加税を課す一方で、時限的に導入されてきた「復興特別所得税」の税率を1%引き下げ、課税期間を延長することとなっている。つまりは、1%の付加税がほぼ恒久的に続くということだろう。加えて、たばこ税の段階的増税も予定されている。