賃上げ分がそのまま手取り賃金の増加にはならない

現実には発注者側が提示した価格を受け入れなければ、仕事をもらえないという力関係にある中小企業が圧倒的に多く、この法律がどれだけ効果を生むかは不明だ。さらに、この改正法案では「下請事業者」という言葉を「中小受託事業者」に、「下請代金」を「製造委託等代金」に変えることが盛り込まれているが、「下請け」という言葉を無くしたからといって「下請け」が消えるわけではない。中小企業庁や公正取引委員会が躍起になって下請けイジメの撲滅に力を注いでいるが、人件費分まで含んだ価格の引き上げはそう簡単ではない。

また、こうした価格転嫁ができたとして、大企業はそれを最終価格に転嫁するわけで、そうなると物価上昇に弾みがつくことになる。賃上げをしても物価上昇がさらに進めば、生活は楽にならない。