備蓄米が放出された。コメの価格は下がるのか。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「本来なら政府備蓄米で21万トン供給されるのであれば、価格は5キロで2100~2200円程度に安くなる。だが、農水省が備蓄米を売り渡すのは農協だ。農協がコメを売り控えると価格は下がらない」という――。
2025年3月7日、神奈川県の倉庫で撮影された政府備蓄米。農林水産省は、政府備蓄米の放出に向けた入札を3月10日に開始すると発表した。
写真=AFP/時事通信フォト
2025年3月7日、神奈川県の倉庫で撮影された政府備蓄米。農林水産省は、政府備蓄米の放出に向けた入札を3月10日に開始すると発表した。

コメ価格が下がるかは農協次第

昨年夏、令和のコメ騒動が起きてから、3月10日やっと農水省が備蓄米を放出した。

これによってどれくらいコメの値段が下がるのか、マスメディアの人たちからさかんに質問を受ける。当面の価格の動きとして私は次のようにコメントしている。

農水省が備蓄米を売り渡すのは農協等の集荷業者である。価格低下を嫌がる農協が放出される備蓄米と同量のコメを売り控えると市場での供給量は増えず米価は下がらない。仮に21万トンと同量の供給増加があれば、現在60キログラム(一俵)あたり2万6000円の生産者米価(農協と卸間の相対価格)は半分の1万3000円に、小売価格は5キロ2100~2200円に低下。つまり、コメの値段は0~50%の範囲内で低下する。

もし農水省がその存在を主張する投機目的で買い占められている“消えたコメ”が価格低下を恐れて慌てて売り出されると、生産者米価は今の3割の水準(7500円)に暴落し、小売価格は5キロ1200円程度に低下する(以上は、流通マージンも生産者米価と同率で低下すると仮定した)。

なお、今年10月以降はおもしろい展開が予想されるので後ほど詳しく解説する。