川勝平太前知事の辞任と「リニア推進派」の静岡知事が誕生してから半年以上が経った。静岡工区の進捗はどうなっているのか。ジャーナリストの小林一哉さんは「後任の鈴木知事は川勝前知事のように自ら積極的にリニアの知識を得ようとせず、事務方に頼りっきりだ。これでは来るべき時に政治的決断が下せるのか疑問が残る」という――。

川勝前知事と鈴木知事の決定的な違い

川勝平太前知事が突然退場し、昨年6月に「リニア推進派」の鈴木康友知事が就任して半年以上が過ぎた。

鈴木知事の3月13日記者会見
筆者撮影
鈴木知事の3月13日記者会見

記者会見などでリニア問題について問われると、「解決に向けてスピード感を持って進める」などと毎回同じ決まり文句を唱える鈴木知事だが、ここにきて、鈴木知事が静岡県のリニア問題をまったく理解できていないことがはっきりとしてしまった。リニア知識の底が浅いことをごまかそうと必死である。

「反リニア」に徹した川勝前知事はJR東海に言い掛かりをつけるためにもリニア問題を正確に理解しようとしていた。

一方、鈴木知事は事務方から表面的な情報を受け取るのみにとどまっている。自ら積極的にリニア問題に関わるという姿勢はまったく見られない。

だから、鈴木知事は記者たちの質問にもトンチンカンな回答しかできていないのだ。

退任する森副知事の「最後っ屁」

3月11日に開かれた静岡県リニア専門部会の結果を受けた翌々日13日の記者会見で、それがはっきりとしてしまった。

11日の専門部会は、静岡県のリニア問題の責任者を務め、3月末で退任する森貴志副知事が今後の混乱のタネとなる発言を行って終わってしまったのだ。

森副知事の発言は、JR東海だけでなく、会議を傍聴していた大井川利水関係協議会のメンバーらを驚かせた。

それなのに、「森発言」について事務方は知事にまったく説明しなかったようだ。

3月末に任期途中で辞めさせられる森副知事は最後の最後になって、苦しまぎれの「最後っ屁」を放ち、知事への不満を爆発させる格好となった。

鈴木知事は11日の専門部会の状況をまったく把握していなかった。

森副知事の「置き土産」を任されるリニア担当者らは今後の対応が決まっていないこともあり、説明しにくかったのかもしれない。