「監視体制」は混乱のタネになること必至

さらに、森副知事は「監視体制」について大井川利水関係協議会の了解を得ることも提案したのだ。

森副知事の囲み取材
筆者撮影
森副知事の囲み取材

監視体制の仕組みをどうするのかはJR東海と県事務局とで行うだろうが、森副知事の提案の通りに、大井川利水関係協議会の了解を得ることと県中央新幹線環境保全連絡会議で評価することだけはその場で決まった。

大井川利水関係協議会は、JR東海の保全措置の基本合意に関わる利害関係者であるが、実際的な作業となる「監視体制」についてはまったくの門外漢である。そこに持ち込まれても困惑するだけだろう。

いずれにしても、森副知事の提案は唐突であり、今後、事務方での調整が多く、煩雑でもあり混乱のタネになるのは間違いない。

筆者は県事務局に進捗状況を問い合わせたが、いまのところ、まったく作業は行われていないようであり、大井川利水関係協議会の開催もまったく決まっていないという。

鈴木知事「スピード感を持って」のウソ

この専門部会を受けた13日の記者会見で、鈴木知事は「JR東海との対話を要する28項目のうち、8項目が対話終了となり、引き続きスピード感を持って、残りの対話を進めていきたい」などと相変わらず、表面的な議事内容を述べた。

これに対して、記者から「スピード感を持って進めていくという上で、何か方針、方策等があるのか」とただした。

鈴木知事は「方針というのは特にない。JR東海にしっかりと対応してもらい、物理的に掛かる時間をいかに短くするのかに尽きる」などとひとごとのような発言をしただけである。

それで、「物理的な時間を縮めることで、年内の対話完了も見込めるのか」と突っ込まれた。

これは、静岡工区(8.9キロ)の着工に向けて、鈴木知事が1月6日の新年会見で、「(年内の対話完了は)物理的に難しい」と“爆弾発言”したことへの疑問である。

記者は「現時点でも、年内の対話完了が見込めないのは変わっていないのか」と追及したのだ。

何と、その追及に鈴木知事は「よくわからない」と1月6日の発言を否定してしまったのだ。

その上で、「期限を言うと、それが独り歩きしてしまうので、できるだけ時間を短くするよう努力していきたい」などと、「年内の対話完了」という表現を避けて、曖昧にごまかすのに精いっぱいだった。

具体的な内容に乏しく、事務方からの説明も通り一遍で表面的な議事内容のみだったことがわかる。

これで今回の森副知事の提案が知らされていないことも明らかとなった。

事業者のJR東海の対応のみを求めて、対話を進めていると頭から思い込んでいたからだ。

しかし、なぜ、森副知事は、混乱のタネを残すような提案をしたのか?