約100万円の家賃を滞納した男性の凶行
1月15日、東京都杉並区にあるアパート前で、居室からの立ち退きを求める強制執行に訪れた家賃保証会社社員と執行官が、住人に刺されて死傷する事件が起きた。一部報道によると、容疑者の男性(41歳)は「スキマバイトをするようになってから生活保護を打ち切られた」という旨の供述をし、家賃滞納は100万円近くに達していたとされる。
生活困窮者支援などを行うNPO法人「トイミッケ」代表理事の佐々木大志郎さんは多くの相談者と出会う中で、この事件の背景にある構造に既視感を覚えたという。
「『働ける』『働きたい』という世代の人たちが生活保護を利用しながらスキマバイトなどの日払いの仕事をすることで、家賃滞納に至ってしまうケースは増えている印象があります」。
佐々木さんは仕事や住まいを失った人に1泊分の宿や非常食などを提供し、公的支援につなげる「せかいビバーク」という活動に取り組んでいる。相談者の7割は20〜40代の「働ける世代」だ。
ただ働けるといっても、実態は寮付き派遣や住み込みのリゾートバイトといった全国各地を転々としながらの不安定雇用が多く、こうした仕事が途切れると、文字通り隙間を埋めるようにスキマバイトや日払いの派遣労働で日銭を稼ぎつつネットカフェや友人、恋人の家などに身を寄せる「見えないホームレス」状態の人も少なくない。
生活保護の制度上の“罠”にはまる
こうした相談者に生活保護の利用を促すと「8割以上が『生活保護は嫌』といい、元の不安定な仕事に戻っていく。そしてそのうちの4割が再び困窮します」(佐々木さん)。
相談者の一部は生活保護につなぐわけだが、彼らはアパート入居によって「足場」ができたことで、それまでのような寮付き派遣やリゾートバイトといった仕事を選びづらくなる。ここに「生活保護は恥」「早く抜けなければ」という焦燥感が追い打ちをかけ、手軽にできるスキマバイトを始めてしまうのだという。佐々木さんは「ここで生活保護の制度上の『罠』にはまることになります」と指摘する。どういうことか。


