アプリ登録者数はコロナ禍を境に急増
佐々木さんの話を裏付けるように別の支援団体のスタッフは「以前は不安定就労の人は、ケースワーカーが半年ほど様子を見たり、安定した仕事に就けるよう指導したりするのが一般的でしたが、コロナ禍以降、不安定な仕事でも、短期間で廃止になる人が増えました」と打ち明ける。
私の取材実感でもコロナ禍ごろから、支援団体のスタッフが稼働年齢層の生活保護利用者に「焦って働かないで」などと声をかける姿を見かける機会が増えた。彼らは不安定でもとにかく働こうとする。その結果、保護費が減額されてやりくりができなくなるケースが相次いだからだ。
一方で不安定雇用の象徴ともいえるスキマバイトのワーカーはコロナ禍を境に急増している。アプリ事業者らでつくる一般社団法人「スポットワーク協会」によると、2019年に約330万人だったアプリの延べ登録者数は、2025年10月には約3800万人に達した。目の前に手軽な選択肢があるのだ。1日も早く生活保護をやめたい人が日払いの仕事に飛びついて「詰み状態」になることと、スキマバイトの急拡大は無縁ではあるまい。
杉並区「生活保護の廃止は慎重に判断」
事件が起きた杉並区で生活保護行政を所管する杉並福祉事務所は取材に対し、「(容疑者の男性が)生活保護を受給していたかなどの情報は個人情報であり、具体的なお答えをすることはありません」という旨を書面で回答したうえで、就労支援や保護廃止の判断についておおむね次のように説明した。
「(稼働年齢層への)就労支援の基本は安定した収入を目指すもので、いたずらに日雇いのような仕事を勧めることはありません。廃止については、定期収入を恒常的・安定的に得られる見込みがあるか、特別な事態が生じない限り保護を再開する必要がないかなどを見極め、本人からも自立のめどを聞き取るなどして慎重に判断しています。また廃止の際は、今後生活に困窮した場合はいつでも相談するよう伝えることを原則としています」
一方でかつて首都圏のある自治体で、生活保護を利用しながら日払いの仕事をしたという30代の男性はケースワーカーとのやり取りのタイミングが合わず、翌々月に2カ月分の収入の返還を求められ、食費にも事欠く生活を強いられた。男性は「収入認定の仕組みは複雑。もう少し丁寧に説明してほしかった」と振り返る。
