視座を高めることで解決策が深く・広くなる
国内の防災事業で先駆者的な存在である能美防災に勤務する山川一平さんは、3年ほど前に総合企画室に配属され、主に新規事業開発を担当している。
「新規事業開発のベースになるのが、顧客の課題を探索・洞察して、その課題の解決策を事業として落とし込むことです。そこで大切なのが、できるだけ大きな課題に注目すること。でも、以前は目先の課題につい目が向いてしまいがちに。それでは会社に大きな収益をもたらす事業には結び付きません。大きな課題を見つけ、事業構想という大きな絵を描く力を身に付けたいと常々考えていました」
1986年生まれ。2009年に明治大学農学部を卒業し、能美防災へ入社。19年からセコムへ3年間出向。22年より総合企画室に所属し、中長期ビジョンの重点施策である「未来共創プロジェクト」を担当。
そうしたなかで、経営幹部育成プログラム「BBT経営塾」卒塾生であり、構想力についても理解している上司から紹介されたのが、「構想力・イノベーション講座」だった。絶好な機会の活用を決めた山川さんだが、一抹の不安が頭のなかをよぎる。長丁場の受講期間において、仕事や家庭と両立できるか気がかりになったのだ。
「終わってみるとまったくの杞憂でした。通常の講座はすべてオンラインで行われます。その動画はダウンロードができ、昼休みの30分間や通勤途中の1時間ほどを利用して視聴したり、アウトプットを掲示板にアップしたりすることで、問題なく進められました」
いくつもの講座のなかで山川さんの力が特に入ったのが「RTOCS(Real Time Online Case Study)」。自分が経営者や組織のトップだったら、どういった戦略を取るのか、当事者になりきりながら構想を練るトレーニングが行われる。いまでも山川さんがよく覚えているのが、「東京都稲城市の市長だったら」という設定の回であった。
「たまたま知人に稲城市在住の方がいて、生活者としての生の意見を聞けたのです。そのほか受講生からも意見をもらい、浮かび上がってきた課題を多角的に捉え直し、当初思い描いた解決策を方向転換していく『ピボット』の重要性を学べました」
そして“山川市長”は、空間的なゆとりや自然環境に恵まれた自治体であるのにもかかわらず、高齢化が進み自ら衰退に向いている現状の課題を端的に指摘。そのうえで若者が住みやすい街づくりや、特産の梨を活用した産業振興などで、選ばれる都市モデルの確立を急ぐ必要性があると提言した。
当初の目的であった大きな課題を見つけることに関して、軽井沢でのフィールドワークが山川さんにとって大いに参考になった。物事を俯瞰しながら視座を高めていくことによって、課題に対する解決策に深みと広がりが出てくることを学べたそうだ。
「例えば、年間観光収入を2倍にするにはどうしたらよいか、という課題を持って軽井沢に足を運び、現地の人にインタビューしたことが視点転換につながりました。その結果、企業のCSR資金と自治体補助金を活用して放置された私有林を再生することで、上流から下流域までの防災力を継続的に維持していくプラットフォームづくりの着想を得たのです」
受講を通してまさに会社へ提言可能な新規事業を構想できた山川さんであるが、自身と同じように構想力を身に付けた人間を社内に増やす機会を設ける重要性を訴えていく考えでいる。
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