貴重な人生の時間を浪費しない方法

2025年、皆さんはどんな1年を過ごされたでしょうか。なかには「同じような毎日の繰り返しで、特に何もしないまま1年が終わってしまった」という人もいるかもしれません。年末を迎えるたびに、「今年も無駄に過ごしてしまった」と反省する人は少なくないようです。

しかも、年齢を重ねるほど、年月が短く感じられるようになります。1年どころか数年があっという間に過ぎてしまいますが、3年前や5年前の自分が何をしていたかと聞かれたら、すぐには思い出せません。

その一方で、不思議なことに中学や高校時代のことは今でもよく覚えていて、私の場合は中1のクラスの席順まで思い出せるほどです。学生時代は学年や学期で時間が区切られているので、「中学1年の春はこんな感じだったな」と強く印象に残るのかもしれません。

そこで、2026年を無駄に過ごさないために、皆さんに提案があります。それは時間を区切って自分がやりたいことを決め、家族や友人に宣言することです。例えばこんな感じです。

「島崎しまざき、わたしはこの夏を西武に捧ささげようと思う」

これは本屋大賞を受賞した宮島未奈みやじまみなさんの青春小説『成瀬なるせは天下を取りにいく』の冒頭を飾る一文です。発言の主は中学2年生の成瀬あかりで、島崎はその友人、“西武”とは西武デパートのことです。いきなり何を言っているのだと思うでしょうが、島崎も同じだったようで、こう聞き返します。

「夏を西武に捧げるって?」
「毎日西武に通う」

成瀬たちが住む滋賀県大津市の唯一のデパートである西武大津店が8月末で閉店することになり、その1カ月前から営業終了日まで、夕方のローカル番組が西武デパート前から毎日生中継する。そこに毎回映るというのが、成瀬の言わんとするところだったのです。

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なぜそんなことをするのかと聞かれて、本人は「この夏の思い出づくりかな」と答えています。中学生が、貴重な夏休みの時間を閉店するデパートのために使うという発想もユニークですが、私は何より「わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」というセリフがお気に入りです。

一定の期間を「○○に捧げる」と宣言すれば、その時間をぼんやりと無為に過ごすことはなくなります。1年を一つのことに捧げてもいいのですが、成瀬の西武通いがその夏にしかできなかったように、春夏秋冬それぞれに適した時間の捧げ方があるように思います。

(構成=塚田有香 撮影=川しまゆうこ イラストレーション=米山夏子)

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