急激な変化の波はもはや避けられない
生成AIの登場により、人々の仕事や生活は大きく変わりました。変化の波はあまりにも急激で、もはや避けようがありません。私たちはこのビッグウエーブをなんとか乗りこなし、試行錯誤しながら生成AIとの付き合い方を考えていくしかないのです。「そんなものを使わなくても仕事はできる」などと言っていたら、自分だけが波にのみ込まれてしまいます。
ただし一方で、「AIに何でも丸投げしていいのか」という視点を持つことも大事です。例えば、教育の分野では、AIやデジタル機器に依存することで脳の働きが衰え、学習能力が低下するという説が出ています。いくら生成AIが便利でも、すべてを委ねてしまうのはリスクもあるということです。
よって、生成AIとうまく付き合っていくには、その成り立ちや仕組みについて、少なくとも基礎的な知識は押さえておくべきではないでしょうか。
今回ご紹介する『脳・心・人工知能〈増補版〉』は、「そもそもAIとは何か」を知るのに最適な一冊です。著者の甘利俊一氏は、生成AIに至る人工知能研究の源流を切り開いた先駆者として知られます。本書は甘利氏が人工知能の仕組みと研究の歴史について、一から丁寧に解説してくれるので、「理論的なことは全くわからない」という人にこそおすすめです。
人工知能は、人間の脳の働きにヒントを得て提唱された理論モデルから誕生しました。2000年代に入って深層学習(ディープラーニング)が登場したことで研究が飛躍的に進み、現在の生成AIに発展していくのですが、本書は16年に出版された旧版に加筆したもので、最初の出版時は生成AIが登場する前でした。そこで甘利氏は、25年に増補版を出すに当たり、生成AIに関する解説を書き加えています。
その中に、生成AIに使われる大規模言語モデルや画像生成モデルについて「私も実はその性能の素晴らしさに驚嘆している」と語る一文があります。人工知能研究の礎を築いた天才でさえ、想像しなかったほどの革新的技術ということでしょう。
なかでも興味深いのが、大規模言語モデルの解説です。皆さんも「なぜChatGPTは、あんなに自然な会話ができるのだろう」と不思議に思ったのではないでしょうか。これはAIが膨大な文章を学習したことにより、単語列をパターンとして認識できるようになったからです。
「例えば、『犬』と『猫』は比較的近くに位置するようになるだろう。『美しい』と『綺麗』も同様である」
言語そのものを理解するというより、パターン化によって「これとこれは近い」というグループ分けができるようになった、というイメージのようです。
さらに大規模言語モデルは「この単語の列の次に出る単語が何であるかを類推する」としています。大量のパターン学習により、「この文脈なら次は確率的にこの単語がくるだろう」と瞬時に連想できるわけです。だからChatGPTも、まるで人間と会話しているかのように文章を即座に出力できるのでしょう。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます




