AIとの対話で孤独は解消されるか
誰も自分を理解してくれない。そう思ったとき、人は孤独を感じます。たとえ長年連れ添った夫婦や親しいはずの友人同士でも、「この人は自分のことをわかっていないんじゃないか」と感じる瞬間があるものです。
孤独を抱えたときの対処法は2つあります。一つは、そもそも他人に理解されるなんて無理なのだと諦めること。もう一つは、自分を理解してくれていると思える相手を探すことです。
最近はその相手に生成AIを選ぶ人が増えています。こちらが言うことを何でも聞いてくれるし、自分を否定することもないし、気の利いたアドバイスまでしてくれるので、なんとなく寂しさが紛れるのでしょう。ただしAIが本当に自分を理解してくれているかと問われると、疑問符がつきます。
今から80年以上前に書かれたアメリカの作家カーソン・マッカラーズの代表作『心は孤独な狩人』は、1930年代末のアメリカ南部を舞台に、孤独な現状からなんとか抜け出そうと、懸命に出口を探し求める人々を描いた小説です。
マッカラーズは社会からはみ出した人たちの痛みや生きづらさを細やかに描写した作品で知られます。本作に登場するのも、それぞれにどこか欠けたところがある人物ばかりです。
物語の中心を担うのは、長身で知的な印象を与える聾唖者のシンガーで、ある事情から心に深い孤独を抱えています。彼はある日、南部の町にあるカフェにふらりと現れ、毎日食事をとるようになります。やがて店に集まる人たちは、シンガーに向かってそれぞれの心の内を語り出す――という物語です。
シンガーは耳が聞こえず、言葉も発しません。それでも彼は相手の唇の動きを読みとり、時折うなずきながら、目の前の人と向き合い続けます。
「彼の目を見ていると、この男は他の人間がこれまで聞いたことがないものを聞きとり、他の人間がこれまで考えつきもしなかったものごとを知っている、そんな気がしてくるのだ」
これはカフェの店主によるシンガーの人物評です。つまりシンガーは、「他の人間は理解してくれなくても、この人なら自分をわかってくれる」と思わせるものを持っていたのです。例えばブラントという男は、酒を飲んで酔っ払ってはわけのわからないことを喋りまくるので、他の客は彼を無視していました。しかしシンガーは、我慢強く彼の前に居続けます。
「あんたはな、この町で、おれの言わんとすることが理解できるただ一人の人間だ」
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