人生を切り拓くには、さまざまなフィールドの知識をもっていることが武器になる。原点を復習するバイブルから最先端を学べる解説書まで。5人のプロフェッショナルが「思考の軸」を創るきっかけを解説する――。
『金継ぎの家』『ひなた弁当』『今はちょっと、ついてないだけ』の表紙
撮影=増田岳二

哲学・小説 小説の面白さを再発見できる10冊

普段「チャプターズ」という選書サービスを運営しております私たちのコンセプトは、久しぶりに小説やエッセイを手にする大人に、読みやすい一冊を。読みやすさとは決して簡単さではなく、続きが気になってたまらない状態を指します。そのため、冒頭100ページでの物語の心の掴み方、状況把握、登場人物への感情移入などを選書時には特に大切にしています。

森本 萌乃(もりもと・もえの)東京都生まれ。19年MISSION ROMANTIC創業。20年チャプターズ開業。毎月書名を伏せた3冊の本を選んで会員に案内し、同じ本を読んだ会員同士が出会えるビジネスモデルが独身男女を中心に注目を集めている。
森本 萌乃(もりもと・もえの)東京都生まれ。19年MISSION ROMANTIC創業。20年チャプターズ開業。毎月書名を伏せた3冊の本を選んで会員に案内し、同じ本を読んだ会員同士が出会えるビジネスモデルが独身男女を中心に注目を集めている。

日々忙しく働く方に本をお届けすると考えると、貴重な読書時間を幸せにしたい。小説の面白さを再発見してほしい。そんな思いで、売れ筋や評判だけに頼らず時間をかけて実際に読んで吟味し、デジタル活況の時代にあえてアナログでの選書にこだわっています。毎月3冊を選ぶため、多い月は30冊以上の作品に触れることもあります。

今回の10冊は、プレジデント読者の皆さんにもそんな観点から選んだ、チャプターズの過去選書と私自身の愛読書を織り交ぜたラインナップです。前半の5冊は、主人公が40代以降だったり、郷愁を誘うような、大人世代に向けた内容。後半の5冊は、現代の価値観や社会の空気を映した“いま”を感じる内容で選書してみました。

次のお休み、どなたか一人でも本屋さんに足を運び、物語に触れる時間を過ごしていただけたら本望です。

大人になっても、挑戦を続けたくなる物語
伊吹有喜『今はちょっと、ついてないだけ』(光文社文庫)
伊吹有喜『今はちょっと、ついてないだけ』(光文社文庫)

40歳を超えてからの第二の青春。大人のシェアハウスを覗き見しながら、人生は何度でも、どんな形でもやり直せると優しく教えてくれるこまやかな再起の物語。

山本甲士『ひなた弁当』(小学館文庫)
山本甲士『ひなた弁当』(小学館文庫)

突然のリストラに遭った冴えない中年男が、「あること」に目覚めこっそり立ち上がる。ささやかすぎる挑戦なのにジャンルはしっかり起業・お仕事小説。このくらい軽やかに、好きなことを仕事にできたら幸せだなと前向きな気持ちに。

内田洋子『皿の中に、イタリア』(講談社文庫)
内田洋子『皿の中に、イタリア』(講談社文庫)

美味しさと人情が溢れ出す、イタリアに長く暮らす日本人の絶品エッセイ。こんな人生いいなあと憧れながら束の間イタリアへ脳内トリップ。個人的に義父へ贈り、喜んでもらった思い出の作品でもある。

奥田英朗『東京物語』(集英社文庫)
奥田英朗『東京物語』(集英社文庫)

昭和から平成を生きた作家の自伝的小説。懐かしさと洒脱さを併せ持つ世界観は、まるでファッション誌をめくるような読書体験。この時代の東京を知っている方はきっと楽しさ倍増。

ほしおさなえ『金継ぎの家 あたたかなしずくたち』(幻冬舎文庫)
ほしおさなえ『金継ぎの家 あたたかなしずくたち』(幻冬舎文庫)

金継ぎを営む祖母と孫娘のひと夏の冒険は、手仕事の美しさが光る。進路に悩む10代の切実な目線、その子を見守る祖母や母の目線、どちらも共感できる点が魅力。

いまの価値観と空気を映す物語
君嶋彼方『君の顔では泣けない』(角川文庫)
君嶋彼方『君の顔では泣けない』(角川文庫)

男が女、女が男、別々の器で生きる人生をどちらも繊細な視点から描く。道徳的なテーマであっても、小説で読むと驚くほど自然に腹落ちする感覚を得られるから不思議。