人生を切り拓くには、さまざまなフィールドの知識をもっていることが武器になる。原点を復習するバイブルから最先端を学べる解説書まで。5人のプロフェッショナルが「思考の軸」を創るきっかけを解説する――。
『風土』『マハン海上権力史論』『マッキンダーの地政学』の表紙
撮影=増田岳二

世界史・地政学 「アメリカ主導」の次を読むための10冊

国際社会を支配する原理は、普遍主義と多元主義の間を振り子のように移動する。

15〜16世紀の大航海時代はカトリック教会の普遍主義が支配した時代で、それに続いて国家機能が強まる絶対主義の時代がやってきた。この時代は多元主義的だった。市民革命で絶対王政を打倒し、18世紀末に経済覇権を達成した英国は自由主義という普遍主義に舵を切る。19世紀末には国家機能が強まりドイツが急速に台頭し再び多元主義の時代に入る。

佐藤 優(さとう・まさる)作家・元外務省主任分析官。東京都生まれ、同志社大学神学部卒、同志社大学大学院神学研究科修了(神学修士)。1985年に外務省入省。モスクワの日本国大使館、外務省国際情報局などに勤務。著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など多数。
佐藤 優(さとう・まさる)
作家・元外務省主任分析官。東京都生まれ、同志社大学神学部卒、同志社大学大学院神学研究科修了(神学修士)。1985年に外務省入省。モスクワの日本国大使館、外務省国際情報局などに勤務。著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など多数。

第一次世界大戦を経て、20世紀は当初、自由民主主義、共産主義という普遍主義的傾向が強まるが、1930年代のファシズム、ナチズムの時代には国家機能が異常に肥大した。

第二次世界大戦後、東西冷戦を経て1989年11月のベルリンの壁崩壊、91年12月のソ連崩壊で社会主義体制が消滅し、アメリカ主導のグローバリゼーションという普遍主義が世界を支配するようになったが、20世紀になってそれに陰りが生じた。

特に2022年2月に勃発したロシア・ウクライナ戦争で、ウクライナを支持する西側陣営は事実上敗北し、国家主義、多元主義の流れが強まっている。多元主義の時代の主流の思想が地政学なのである。

アルフレッド・T・マハン『マハン海上権力史論』(原書房)
アルフレッド・T・マハン『マハン海上権力史論』(原書房)

海の地政学の古典。シーパワーを握るには、植民地の拡大は必要なく、軍艦と商船の拠点となる港を要所に造れば良いと説く。海のネットワークが地政学的力になると喝破。

H・J・マッキンダー『マッキンダーの地政学』(原書房)
H・J・マッキンダー『マッキンダーの地政学』(原書房)

陸の地政学の古典。本書では地政学という言葉は一度も使われていない。ナチスの理論家であったハウスホーファーが地政学の本書を優れた理論書であると評価し、影響が拡大。

奥山真司『世界最強の地政学』(文春新書)
奥山真司『世界最強の地政学』(文春新書)

イギリス流の海洋戦略をベースにした地政学を現代に応用した優れた作品。シーレーンに関して、今後、北極海航路が重要になることについて説得力を持つ議論を展開している。

エマニュエル・トッド『西洋の敗北と日本の選択』(文春新書)
エマニュエル・トッド『西洋の敗北と日本の選択』(文春新書)

家族様式と地政学を組み合わせ、優れた現状分析を提示する。アングロ・アメリカン的なグローバリゼーションの後退とロシア、中国、イランなど大陸国家の台頭を説く。

柄谷行人『帝国の構造』(岩波現代文庫)
柄谷行人『帝国の構造』(岩波現代文庫)

東アジアを地政学的に理解するための必読書。中国を中心に周辺(朝鮮・ヴェトナム・琉球)、亜周辺(日本)を区別。中国からの距離が周辺より遠いことが日本の独自性を形成。