記憶力の衰えは関係ない。英語で収入をアップさせた編集記者の森英信さんに、キャリアの停滞を打破した経緯とその後の人生を聞いた。

英語を克服できれば同業他社との差別化になる

私は現在56歳ですが、49歳になるまで英語に対して「憧れはあるものの、実用には至らない」という、距離のある生活を送ってきました。

かつて「MacPeople」というコンピュータ雑誌の編集部にいた1997年、スティーブ・ジョブズがアップルに復帰した歴史的な「MacworldExpo」を取材するためにボストンへ飛びました。しかし、当時の私は英語ができる同行者に頼りきりで、自分自身が英語で質問を投げるような場面は一度もありませんでした。

森英信さん
森 英信 Hidenobu Mori
1990年代、出版社でIT分野の編集記者を務める。モバイルコンテンツ制作会社を経て2005年に編集プロダクションとして独立。AI、クラウド、スタートアップなどのテック領域だけでなく、現在は英語取材を強みとする。

洋楽が好きで、歌詞カードとともに聴き込んでいたおかげで、聴き取ることはかろうじてできていたのですが、語彙力が致命的に欠けていたのです。その後、2000年代初頭には香港や台湾でのモバイルコンテンツ事業にも携わりましたが、そこでも常に通訳が隣にいました。自分の英語でバリバリと仕事をするような方たちとは、ほど遠い場所にいたのです。

私は35歳のときに編集プロダクションを立ち上げ、現在は企業向けのシステムやITインフラ、いわゆる「エンタープライズIT」の分野を主戦場にしています。具体的には、ITサービスの最新情報や導入事例などを取材して記事にまとめ、企業のマーケティング活動を支援する仕事です。

転機が訪れたのは49歳のときでした。この世界でコンテンツ制作を続ける中で、日本語だけではなく英語を掛け合わせることで、同業他社との差別化ができるのではないかと考えました。それに、通訳を介さず海外企業に取材できれば、その分受注金額も増えます。

また、ちょうど娘が外国語大学を受験したいと言い出した時期でもありました。子どもが成長して自分の時間が増えた「じじい」になった節目に、娘との共通の話題づくりとして、自分も勉強してみようと思ったのです。

学習の効率を劇的にアップさせたのは、「abceed(エービーシード)」というAI英語学習アプリでした。今の時代、スマホがあればスキマ時間のすべてを学習に変えることができます。このアプリにはAIが搭載されており、自分が解いた問題から「今のあなたのTOEIC Listening & Reading(以下、TOEIC)予想スコア」をリアルタイムで算出してくれるのです。

一問解くたびに予想スコアが変動する様子は、まるでゲームのレベル上げのような楽しさがありました。朝起きた瞬間から移動中、あるいは子どもを車で送る際のリスニングまで、普通ならSNSやニュースを眺めている時間をすべて英語に置き換えました。

AIが私の弱点を分析し、次に解くべき問題を提示してくれるおかげで、最短距離で学習を進めることができたと感じています。

学習を始めた当初は530点だったTOEICのスコアは約1年で800点を突破しました。その際、成績をFacebookに投稿すると、すぐにある大企業が運営するグローバル向けのSNS運用の仕事が舞い込んできました。

(構成=本誌編集部 撮影=藤中一平)