日本株投資で1500万円の大損失――苦い経験を糧に、米国株を中心とした投資にかじを切り、資産を築いてFIREを達成した米国株投資家・ロジャーパパ氏。約2億円の資産を保有する今も、投資のコアは米国株だという。その米国株の「底力」と「魅力」とともに、情報に溺れず、真の知識を武器にリターンをつかみ取るための心得を、著書『100年変わらないお金持ちの真実 投資できちんと利益を出すための格言43』の言葉を引きながら解説する。
日本株投資で大損しても「勉強したら稼げる」と思った
――ロジャーパパさんはアメリカ留学を経て、GAFA企業で勤務。そのかたわらで米国株を中心とした株式投資を開始し、資産を築いて40代でFIREされました。その経歴を見て憧れる方も多いのではないですか。
ロジャーパパ 国際派と思われることが多いのですが、小中学校は日本の普通の公立、高校は定時制高校です。経済的に厳しい環境で、家に英語をしゃべる人は誰もおらず、初めての海外は20歳のときアルバイトしたお金で行った中国でした。
――現在の金融資産は約2億円とのことですが、最初はどんな投資を?
ロジャーパパ アメリカ留学から帰国し、外資系IT企業に勤めたところ、20代後半で年収が1000万円ぐらいになりました。まだ独身で余裕もあったので、リーマンショックで株価が大きく下がったときに、試しに日本株を買ってみたところ、どんどん値上がりして1500万円ぐらい利益が出たんです。「自分って天才かも」と思ったんですが(笑)、その後は損ばかり。3年で1500万円は消えてしまいました。
――そこで投資をやめようとは思わなかったのですか。
ロジャーパパ ちゃんと勉強していないという自覚があったので、「勉強したら稼げるんじゃないか」と思ったんです。勉強したら、日本株より米国株のほうがすごいということがわかりましたが、買おうにもお金がなくて(笑)。そこで2013年にRSU(Restricted Stock Unit、譲渡制限付株式ユニット)という制度がある、アマゾン・ジャパンに転職しました。入社すると給料とは別に自社株をもらえるのですが、4年働かないと売れないんです。GAFAは何かあるとすぐクビで、平均勤続年数は3年ぐらい。4年間サバイバルするのはなかなか大変なんです。
――ロジャーパパさんは“4年の壁”を超えたわけですね。
ロジャーパパ アマゾン・ジャパンで9年間勤めて2021年に退職し、その間に株価は14倍になっていました。為替も円安に振れ、入社したとき1000万円ほどだった株式が、辞めるときには2億円ぐらいになっていました。それ以外にも現物で米国株を買ったり、ゴールドを買ったり、アメリカで不動産を買ったり、FXをやったりと分散投資をして、身銭を切ってたくさん失敗もして、今に至ります。ただ投資のコアはずっと米国株でした。
――FIREのきっかけは何だったのでしょうか。
ロジャーパパ YouTubeですね。その頃は結婚して子どもも生まれていたんですが、外資系企業はいつクビになるかわかりません。不安定なので何か副業をやろうと考えて、2017年ごろからブログや「せどり」をやったりしたんですが、どれもうまくいきませんでした。YouTubeは2019年にそもそも転職チャンネルとして始めたのですが、やはり全然見てもらえなかったので、気分転換に米国株投資の話をしたんです。そうしたら1000回ぐらい視聴されて、そこから米国株投資チャンネルに切り替えました。
ちょうどその直後に新型コロナで株が暴落したんですね。僕が持っていた米国株も一気に30%から40%下がりました。中には50%も下がったETFもあって、視聴している人たちは「うわ、株式投資って怖い」と思われたと思うんですが、その一方で「がんばってください」という応援が始まり、登録者が1万人を超え、想定していなかった形でバズりました。証券会社からもセミナーの依頼が来たりして副業収入が増え、「これなら会社を辞められる」となって退職したんです。YouTubeチャンネル「ロジャーパパ米国株投資」の登録者は、今では15万人を超えるまでになりました(2026年2月末現在)。
「NISAはS&P500一択でいい?」投資初心者の問いに対する答えは?
――投資初心者の中には、「米国株投資は、日本株投資と比べてハードルが高い」と考える人もいますが、米国株を勧められるのはなぜですか。
ロジャーパパ パフォーマンスがいいからですよ。何のために投資をするかというと、やはり資産を増やしたいからでしょう。S&P500にしても、過去100年間で30%以上暴落したことが8回もあるのですが、その前後には必ず最高値を更新しています。日本株のように34年間一度も最高値を更新しないといったことはないんです。
世界全体の株式の時価総額はおよそ120兆ドル、2京円といわれています。そのうち実は半分がアメリカ株です。2位が中国で10%ぐらい、日本は5%ほどです。結局、世界の株式市場はアメリカが中心なんです。
個人としても、ナスダック企業3社で20年間勤めてきたので、米国企業のすごさはわかっています。株価とは、将来の利益成長を現在価値に巻き戻したものです。利益の指標として一番シンプルなのはROE(自己資本利益率)で、アメリカ企業だと20%ぐらいありますが、日本企業は8~9%です。アメリカ企業では使えない社員はすぐにクビで、逆に仕事ができると給料もポジションもどんどん上がっていきます。国籍、年齢、性別、関係なく実力主義で、投資においてパフォーマンスを求めるなら、そうした企業を選ぶのは必然と思います。
もちろん日本にも素晴らしい企業がたくさんあります。僕自身、アマゾンを退職してからは日本企業の社外取締役に就き、日本の非上場企業に出資もしています。それでも資産形成という失敗できないコアの運用に関しては、やはり成長率の高い効率的な経営を実行するアメリカ企業を軸にしたほうが良いと考えて実践しています。
――2024年のNISAの制度改正で投資を始め、「S&P500一択」で運用中という投資初心者もいますが、その投資方針についてはどう思われますか。
ロジャーパパ “あり”だと思いますね。ただ、まずはS&P500の性格をちゃんと理解するべきです。S&P500はよく「アメリカの優良企業500社に分散投資しているから安全です」といわれますが、先ほど申し上げたように過去100年間で8回暴落していますし、リーマンショックのときは株価に加えドルも下がりました。日本から投資していたら75%も暴落した計算です。そういうことはこれからも起こるでしょう。結局、リスクとリターンは背中合わせなんです。一時的に資産が半分になるぐらいのことは覚悟しなくてはいけません。その代わりに毎年10%も上がり続けているわけです。それでも平気で「自分はアメリカを信じます」という人はS&P500一択でいいし、そうでない人はゴールドなどに資産を分散したほうがいいかもしれません。
情報と知識は別物――書籍執筆の理由は「投資の本質を伝えたい」
――ご著書『100年変わらないお金持ちの真実 投資できちんと利益を出すための格言43』(2026年2月13日発売)は、どういった方に向けて書かれたのですか。
ロジャーパパ 投資の勉強をしようとすると、情報は果てしないほどあります。おそらく多くの人が、その情報の海に溺れているのではないでしょうか。そんな方々に向けて、投資の本質を伝えるような本を書きたいと思いました。
ロジャーパパ 著/KADOKAWA/本体価格1800円+税
ロジャーパパ 今回の本は、投資にまつわる格言を43個選び、柱に据えています。いずれも長く相場を見続けて長期的に大きな利益を出してきた“投資界の偉人”たちの言葉で、そうした人の言葉は目の前のテクニックでなく人間の心理を踏まえ、恐怖や欲望にどう対処するかをちゃんと考えています。僕自身も大損したとき、先人たちの知恵にすごく救われました。
インターネットができて株式情報は民主化し、今では「説明して」とAIに言えば、わからないことでも簡単に答えがもらえます。ただ情報と知識は違います。例えば数字はいくらでも教えてもらえますが、それで知識が身につくことはありません。知識とは識別する能力です。実際に証券口座を開設して、何を買い、何を売るのか――それが識別する能力であり、今回の本では偉人たちの格言を基に、知識につながる話をお伝えしています。
――投資初心者に向けて「ぜひ知っておいてほしい」という格言を、ひとつ挙げていただけませんか。
ロジャーパパ この本で取り上げた格言は、ほとんどが欧米の有名投資家によるものですが、一人だけ日本の人の言葉が入っています。堀古英司さんの「リスクを取らないリスク」という言葉です。
堀古さんは、ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者で、ウォール街で長年運用を行われてきた方ですが、2014年にこの格言と同じタイトルの本を出版され、そこで「投資は海外へ外貨建てでしたほうがいい」と勧めていました。10年たって答え合わせをしてみると、堀古さんの言った通りになっているんです。
ここで言う「リスクを取る」とは、例えば「変動の大きい個別銘柄を買え」といった意味ではなく、人生全体についての話です。30代40代は仕事も忙しく、今はインフレなので給料も上がっていくし、なんとなくいいような気がしている人が多いと思いますが、それでも日本企業のROEは世界平均から見て低いし、日本は人口も減っていて成長が難しい。
日本企業では取締役は会社員が出世してなるものと思われていますが、果たしてそうでしょうか。アメリカでは、長年会社で働いて出世しても取締役にはなれません。取締役は投資の判断ができなければならないので、投資家であり実業家であり専門職なのです。僕が勤めていたアマゾンも取締役は12人いましたが、社員出身はゼロでした。
結果として日本企業では経営者が正しい投資判断ができていません。そういう会社にずっといていいのでしょうか。外資系企業に転職する、あるいはベンチャーに転職するという選択肢もあるし、それを考えようとしないのは「リスクを取らないリスク」と言えます。お子さんがいて難しいと思う人もいるかもしれませんが、僕も子どもが4歳のときにYouTuberになりました。そして今、リスクを取ったメリットを実感しています。投資においても人生においても、しっかりリスクを取り、リターンを得ていく心構えが大事だと思います。
――すばらしい格言と、その格言に基づくロジャーパパさんのメッセージをお聞かせくださりありがとうございます。書籍『100年変わらないお金持ちの真実 投資できちんと利益を出すための格言43』には、今回の記事では紹介しきれなかった格言と投資の知識につながる話が満載です。投資初心者には、ぜひ他の格言にも触れてほしいですね。
(取材協力=ロジャーパパ、構成=久保田正志)