10日分の仕事を一方的にキャンセルされた
また、スキマバイトで生計を立てている50代の男性は10日分の仕事を一気にキャンセルされたことがある。急きょ別の仕事を探したが、その月の収入は激減。こうした経験から「不安定なスキマバイトと生活保護の相性はよくないでしょうね」と指摘する。
生活保護の理想の“ゴール”のひとつは、アパートに入り、安定した仕事を見つけ、自立して地域に定着する――、というものだ。しかし、「就労意欲は高いけど不安定な仕事しかない人たち」にとってはこのゴールは当てはまらない。
一方、この「就労意欲」が果たして本心なのかという疑問もある。稼働年齢層は中でも生活保護への忌避感が強い。SNSなどには生活保護利用者へのデマやバッシングがあふれる。もしこうした“世論”がスティグマ(社会的恥辱感)を植え付け、腰を据えて仕事を探す機会を奪っているのだとしたら、一部のSNS利用者たちの責任も見逃せない。
「大勢の若者がはぐれ者にさせられている」
ただ佐々木さんが指摘する通り、不安定就労や生活保護の廃止を「本人もそれでいいと思っている」のも事実。たとえスティグマによる呪縛だとしても、本人がいいと言っている以上、矛盾や課題は可視化されづらい。
解決策はあるのだろうか。
佐々木さんは「住まいだけでいいので一時的に無料で確保できる仕組みがあるとよい」といい、具体例として、仕事はあるもののネットカフェなどで寝泊まりする人に居住支援や生活支援を行う東京都の事業「TOKYOチャレンジネット」の利用条件の緩和や、生活保護の住宅扶助の単体利用などを挙げる。
またスキマバイトなど日払いの不安定就労については「一定の規制が必要でしょう」とも。せかいビバークの取り組みの中で、体力も元気もある人たちが公的支援を拒み、雇用の調整弁にされ、数年後に再び困窮して戻ってくるケースに数多く遭遇してきた佐々木さんはこう危機感を募らせる。
「昔は、寅さん(映画『男はつらいよ』シリーズの寅さん)のようなはぐれ者はあくまでも例外的な存在でした。ところが今は大勢の若者や働ける世代の人がはぐれ者にさせられている。そんなふうにした社会は罪深いし、いつかその責任を問われる日がくると思います」


