辞める森副知事の「無責任発言」
3月17日の2月県議会最終日で新副知事による新体制が決まった。
森副知事のリニアに関する役割は3月11日の専門部会で終わったのである。提案した「監視体制」うんぬんは新体制に受け継がれることになるから、森副知事は何を言おうが、まったく関係なくなるのだ。
森副知事は2022年7月、難波喬司・前副知事(現・静岡市長)のあとを受けて、川勝知事の強い要請で副知事職を引き受けた。
当時のリニア問題では、川勝知事が「水一滴も県外流出は許可できない」「静岡県の水一滴を引っ張る山梨県内の調査ボーリングをやめろ」などと主張して、山梨県と軋轢を生んでいた。
森副知事は同年10月に、「山梨県内のトンネル掘削で、静岡県内の地下水を引っ張る懸念があるから、静岡県境へ向けた山梨県内のリニア工事をどの場所で止めるのかを決定する必要がある」などとした文書をJR東海に送りつけた。
「山梨県内の調査ボーリングをやめろ」のきっかけとなった文書である。
2023年5月になると、森副知事は「静岡県が合意するまでは、リスク管理の観点から県境側へ約300メートルまでの区間を調査ボーリングによる削孔をしないことを要請する」とした意見書をJR東海に送った。
この意見書に、山梨県の長崎幸太郎知事は怒りを募らせ、「山梨県の工事で出る水はすべて100%山梨県内の水だ」と断言した上で、「山梨県の問題は山梨県が責任を持って行う」などと山梨県内の調査ボーリングを進めることを宣言した。
つまり、川勝知事が反リニアに火をつけ、森副知事がさらに大きく燃え上がらせるという役割分担を果たしていたのだ。
JR東海との対話は今年中に完了せず、来年の2026年以降にずれ込む見通しを示したのも事務方トップの森副知事だったのだろう。
鈴木知事はリニア問題で自発的に行動を
今回、辞任に当たって森副知事はさらなる混乱を意図して、モニタリングの監視体制を「置き土産」にしたのだろう。
全国的に注目を集める静岡県のリニア問題について、県政トップがあまりよく理解していないのでは情けない限りである。
JR東海は現在、大井川流域の10市町で地元住民を対象に「大井川の水を守るための取り組みに関する説明会」を開いている。
鈴木知事にはそこでJR東海の説明を聞いてみてほしい。県専門部会といかに意見が違っているのかわかるだろう。どちらが正しいのかは、自分自身で判断するしかない。
事務方に頼りきりになるのではなく、時に自ら自発的に行動する。それがリニア問題を理解するということである。
同時に大井川流域の住民たちが何を求めているのかちゃんと耳を傾けるべきである。それをしなければ、静岡県のリニア問題の解決はないだろう。