販売や物流の現場にTPSを導入するための部署、業務改善支援室。室長である豊田章男をはじめ、約70名のメンバーは皆、茶色のジャンパーに身を包んでいた。その一人であった飯塚素人が語る、豊田章男の姿とは――。

「トヨタは儲かっていて、いい会社」章男が不機嫌になった真意

業務改善支援室ができたことに刺激されたのが同じ国内営業の部門にいた飯塚素人もとひさだった。飯塚は当時、同室と同じフロアで働いていた。しかも、隣り合った部署だ。全員がスーツでなく、茶色のジャンパーを着ていたこと、室長が豊田家の人間だったことに興味を持った。飯塚自身は販売店の三代目だ。販売店の二代目、三代目で後継者を目指す人間は数年間、トヨタで仕事を学ぶことができたのである。飯塚もまたトヨタで学び、現在は祖父の代に創業したネッツトヨタ東埼玉の社長として同社を成長させている。

当時、飯塚は業務改善支援室のメンバーを見ていて「変わった人たちだな」と違和感を覚えた。

「茶色のジャンパーの人たちがオフィスにいるのは月曜日の午前中だけでした。月曜日の午後になると、全員、各地の販売店へ出かけていくから誰もいなくなってしまう。次の月曜日まで会社にやってこない。室長の豊田(章男)さんもいないことのほうが多かった。