さらに、NHK単独のサービスのため、アプリをインストールしても、テレビのように他の民放の番組を見ることができない。

つまり、ネット視聴は、放送に比べてコンテンツやサービスが確実に劣っているのだ。

にもかかわらず、地上放送の「ネット受信料」は、放送と同じ月額1100円を想定しているというのである。

総務省の有識者会議では、そうした点を考慮して放送とは異なる価格づけが考えられるという意見もあったが、反映されそうにない。

強気の値決めの理由として、NHKは「ネットは見逃し配信や追っかけ配信という、放送にはないサービスがある」と強調しているようだが、本末転倒と言わざるを得ない。確かにネットならではのメリットだが、まずは「同一」のコンテンツやサービスを実現したうえで、ネット視聴者のためのプラスアルファの魅力として訴えるべきだろう。

積み上げて置かれたブラウン管テレビ
写真=iStock.com/timnewman
※写真はイメージです

「ネット受信料」を払ってまでNHKを見たい人はいるのか

もっとも、「ネット受信料」を払ってまでNHKの番組を見ようとするネット視聴者が、どれほどいるかは未知数だ。

ターゲットは若年世代になるだろうが、この世代はテレビ離れが顕著であることが、NHKの放送文化研究所の調査などで明らかになっている。

24年4月末の受信契約者数(地上放送)は4415万人。これに対し、「NHK+」の登録者数は20年4月のスタートから丸3年で500万件程度。放送の付加サービスとして無料で利用できるのに、ネット視聴者は1割程度ということになる。

この数字を多いとみるか、少ないとみるか。

当面は、「NHK+」と同様のサービスが見込まれるだけに、「必須業務」に移行したからといって、「ネット受信料」を払う視聴者が急増するとは考えにくい。

「しばらくは開店休業状態」という見立ては、説得力がありそうだ。

ネットにウイングをひろげた「新生NHK」は、看板倒れにならないよう、国民目線に立った腰を据えた取り組みが求められる。

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