結婚できる人とできない人はどこが違うのか。フリージャーナリストの秋山謙一郎さんは「結婚相談所を取材したところ、年収350万円で会社役員の男性を紹介された。男性は『学生時代の友人たちが羨ましがるような若くて美人の女性と結婚したい』と話しているが、そんな意識のままでは絶対に結婚はできないだろう」という――。
ハートマークの紙片を差し出す男性
写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです

中高年の婚活、ヒラタさん(52)の場合

まとめ上手の結婚相談所でも匙を投げる人はいるようだ――。

「一応会社役員。父が経営する地場メーカーです。年収は350万円程度。名ばかり役員なので実質無職みたいなもの。だから結婚後はふたりの時間もたっぷり取れます。住まいは実家の敷地内にある離れです。3LDK・60平方メートルなのでふたりで十分暮らせます」

こう語るのはヒラタさん(52)だ。現在独身。過去、婚歴なし。ヒラタさんが自称するところによると100kgは超えていないというが、その見た目は100kg超えの巨漢だ。本人いわく、長年の楽しみで趣味でもある「インスタントラーメンの食べ比べ」のせいだという。

それ故に大柄ではあるものの決して引き締まった体とはいえないその身に、誰が見ても白髪染めによるものとわかる漆黒色の髪、これに今時珍しいパンチパーマで決めている。

そんないかつい風貌をさらに際立たせるのが、これまた近頃ではお目にかかることの少ないダブルのソフトスーツだ。イタリアンブランドが好みだという。

愛車は青春期を過ごした当時からの憧れの車、今ではネオ・クラシックカーと呼ばれる1980年代製造のそれだ。これを法律に触れない程度に車高を低くして乗っている。

すべては、ヒラタさんいわく、「昭和のファッションが好き」だからだそう。

典型的な「バブル期の青春時代」を過ごす

そんなヒラタさんは、兵庫県の郊外の住宅地で生まれ育った。地元の2番手とも3番手ともいわれる公立高校を卒業。部活動はせず、もっぱらクラスメイトたちと群れて過ごした。勉強も高校生活も不完全燃焼だった。大学受験は失敗に終わる。

こうして始まった浪人生活は予備校で過ごした。高校時代とは打って変わって先生や受験アドバイザーの指示に従い受験勉強をこなす。浪人1年、関西の難関私立大学の次の難易度といわれる「産近甲龍」に合格。経済学部へ入学した。

「別に経済学を学びたかった訳ではありません。ただ当時の時代の空気感というか。周りも大学に行くし特になりたいものもなかったし。どうせサラリーマンになるのなら経済学部か経営学部かなと。受かった大学もそのなかで偏差値がいちばん高いところというのがその理由です。予備校の先生からのアドバイスで決めました。それだけです――」

典型的な昭和、バブル期の大学生といった様相のヒラタさんだが、大学入学後もその生き様は変わらない。

「厳しい体育会は嫌」「文科系の部活で何かに没頭する気もなく」との理由から、当時の大学生にありがちな「オールラウンドサークル」――夏場はテニス、サーフィン、キャンプなど。冬場はスキーにスノーボードといった季節ごとのスポーツを楽しむサークル――で青春を謳歌した。ヒラタさんは言う。

「この手のサークルの目的はずばりナンパ。彼女探し、もっと踏み込むとセックスの相手探しです」