見合いの席で「趣味は酒と麻雀、タバコに風俗」と発言
ヒラタさんが彼らにエールを送るつもりで、「大した給料をもらってるわけではないのだから、仕事なんて適当にしろよ」と言うと、大学生時代ならば、皆、笑ってくれたのだろうが、30歳を超えるとそうはいかなかった。
「何となくしらけるというか、乾いた笑いというか。以来、会う機会は徐々に遠のいていきましたね」
30歳も半ばを迎えようとした頃、ヒラタさんの両親も、さすがにこのままではいけない。所帯でも持たせれば、家業に精を出すか、何か別の仕事を見つけてくるだろうと考えたからだ。
それでヒラタさんはしばらく週末となれば“見合い”へと駆り出される。
「でも、そもそも結婚する気などさらさらないのですよ。ただ週末ごとにうまいモノが食べられる。そんな心掛けなので、とても見合い話がまとまるはずもないですよね」
見合いの席では豪傑を装い、「趣味は酒と麻雀、タバコに風俗」などと言い顰蹙を買う。たまに相手女性とその両親から大爆笑されるが、後で丁寧に、「よいご縁があることを祈っています」と断りが入る。まさに大学生時代の就職活動時、「何か失敗談は?」と聞かれ、「財布を持たずに風俗店に行ってしまった」と話して大ウケ。でも採用に結びつかなかったのと同じだった。
仲人から匙を投げられ、「見合いラッシュ」は終了
結局、両親から頼まれた仲人筋からも、「そもそも結婚する気がないご子息の良縁をまとめることなどできません」と匙を投げられた。
こうしてヒラタさんの言葉で言う“第一次見合いラッシュ”は1年も続かず幕を閉じた。
「さすがに40歳前になると結婚や就職どころか人生に焦りました。高校や大学の同級生のなかには事業を起こして成功している者や文筆家となって活躍している者もいましたし。自分より下、格下と思っていた者何人かが社会でそれなりに根を下ろしている事実に愕然としました」
そして一念発起したヒラタさんは親からの出資で事業を始めた。だが、しょせんは素人商法。2年持たずに閉業。その肩書は、再び父親経営企業の役員だけになった。気がつけば年齢は40代半ばを過ぎていた。
この頃になるとヒラタさんの将来を憂えるがゆえ、厳しかった両親、なかでも母親の態度が著しく軟化していく。
「何度も違法風俗通いで警察の世話になっています。母親からは、『そういう世界でたくましく生きていく女性のなかにでも親しくしている人はいないの?』と――。40代も半ばを過ぎた子どもの結婚相手は親もあれこれ言わないといったところでしょうか」