国連の女性差別撤廃委員会は10月29日、日本政府に対し、皇室典範の改正などを勧告する最終見解を発表した。神道学者で皇室研究家の高森明勅さんは「国民の圧倒的多数は、勧告を受けるずっと前から、女性差別的な今の皇室典範のルールとは異なる意思を示してきている。それを黙殺し続けてきた政府には、今回の勧告に抗議する資格などないのではないか」という――。
国連・女性差別撤廃委員会の勧告
国連の女性差別撤廃委員会は去る10月29日、わが国も締結している女性差別撤廃条約に基づいて、皇位継承資格を男系男子だけに限定する日本の皇室典範を改正して男女平等を保障するよう、日本政府に勧告した。
この勧告では、「選択的夫婦別姓」制度の導入や人工妊娠中絶に配偶者の同意が必要とされている要件の削除、国会で女性議員が少ないことへの懸念などが、盛り込まれていた。
だが、皇位継承問題への言及がとりわけ注目されたようだ。
このところ天皇、皇后両陛下のご長女の敬宮(愛子内親王)殿下の公的なご活動が、しばしば人々の目に触れるようになった。そのような場面での敬宮殿下の振る舞いに、共感の輪が広がり、将来、次の天皇として即位されることを望む国民の声がますます高まっている。
それに加えて、しばらく停滞している国会での皇位継承問題をめぐる取り組みがいずれ再開されるだろうと予想されることから、多くの人の関心がそこに向かったのだろう。
勧告への国内の反応は、「歓迎」と「反発」に鋭く分かれた印象が強い。
政府は勧告に反発
政府は強い反発を隠さなかった。林芳正内閣官房長官は10月30日の記者会見で次のように述べている。
「皇位につく資格は基本的人権に含まれないことから、女子に対する差別に該当しないというわが国の立場を表明するとともに、強い遺憾の意を伝達した。それにもかかわらず、最終見解に記述がなされたことは大変遺憾であり、委員会側に対して強く抗議するとともに、削除の申し入れを行った」と。
政府に同調するメディアも
読売新聞も政府に同調した。「皇室典範に勧告 歴史や伝統を無視した発信だ」と題する社説を掲げて、次のように主張した(読売新聞オンライン、11月5日、午前5時公開)。
「この発信は、あたかも皇室典範に女性差別があるかのような誤った印象を広げる恐れがある。
政府が委員会に抗議し、皇室典範に関する記述の削除を求めたのは当然だ。国際社会に対し、勧告が日本の皇室制度の特徴を何ら理解せず、誤解に基づくものだと説明していくことも欠かせない。
そもそも憲法は、天皇の地位について『国民の総意に基づく』と定めている。皇室をどう安定的に維持していくかは、国民が考えて決めるべき問題である」
政府が委員会に抗議し、皇室典範に関する記述の削除を求めたのは当然だ。国際社会に対し、勧告が日本の皇室制度の特徴を何ら理解せず、誤解に基づくものだと説明していくことも欠かせない。
そもそも憲法は、天皇の地位について『国民の総意に基づく』と定めている。皇室をどう安定的に維持していくかは、国民が考えて決めるべき問題である」