国民の意思はすでに明らか
しかし一方、「主権の存する日本国民」の圧倒的多数が、勧告を受けるよりずっと前から、正当な理由もなく女性皇族の皇位継承資格を排除する、まさに女性差別(!)的な今の皇室典範のルールとは、異なる意思を示している事実がある。
「女性天皇」の賛否をめぐる近年の各種世論調査の結果を振り返ると、以下の通りだ(賛成には「賛成」「どちらかといえば賛成」を含ませ、反対には「反対」「どちらかといえば反対」を含ませている)。
賛成=76%、反対=19%。
同年9月、NHK調査。
賛成=82%、反対=12%。
同年10月、共同通信調査。
賛成=82%、反対=14%。
同年11月、時事通信調査。
賛成=76%、反対=19%。
平成31年(2019年)4月、共同通信調査。
賛成=85%、反対=15%。
令和元年(2019年)9月、NHK調査。
賛成=74%、反対=12%。
令和3年(2021年)4月、共同通信調査。
賛成=87%、反対=12%。
令和6年(2024年)4月、共同通信調査。
賛成=90%、反対=9%。
同年5月、毎日新聞調査。
賛成=81%、反対=10%。
このテーマは、確かにわが国の主権にかかわる問題であり、「国家の基本に関わる事項」だ。
しかし、それに対する「主権の存する日本国民」の意思はすでに明らかだ。多くの国民は、女性差別的な今のルールを改めて、「女性天皇」を可能にすることを求めている。
それを黙殺し続けてきた政府には、今回の勧告に抗議する資格などない。
「男系男子限定」は新しい制度
わが国では、男尊女卑の考え方が根強かった東アジア地域では例外的に、過去に多くの女性君主が登場している。具体的には、飛鳥時代から江戸時代にかけて、10代・8人(うち2人は譲位後に再び即位)の女性天皇がおられた。
大宝律令や養老律令には、周辺国とは違って、女性天皇(女帝)の法的な位置づけもなされていた(「継嗣令」皇兄弟子条)。
誤解されがちだが、皇室の歴史上、現在の男系男子限定ルールは明治の皇室典範で初めて採用された、新しい制度だ。その場合も、「正妻以外の女性(側室)との間に生まれたお子さまにも皇位継承資格を認める」というバックアップの仕組みと“セット”だった。
今のような、「側室不在の一夫一婦制なのに男系男子限定」というルールはまったく前例がない。
前例がないばかりか、お1人の皇后や妃が必ず“男子”を生まなくては、皇位や宮家が次の代に受け継げない、という持続困難な制度になっている。
少子化が進む中では、親子関係から外れた傍系による継承にも、過大な期待はかけられない。