人間の脳はもともと騙されやすくなっている

詐欺被害防止を周知するキャンペーンで、「“私は大丈夫”が一番危ない」というお決まりのフレーズを聞いたことがあるかと思います。これは「詐欺を他人事として捉えていると、足をすくわれて騙されてしまうので気をつけましょう」と注意喚起しているわけですが、実際のところあまりピンと来ませんよね。特殊詐欺の被害に遭った人の報道を見るたび、心のどこかで「詐欺は高齢者や情報リテラシーの低い人が引っかかるもの」と思い込んでいる人は多いのではないでしょうか。

しかし、脳科学的な立場から紐解くと、基本的に騙されない人間というのはいません。人間は他者を信じてしまう生き物なのです。その理由は、人類が発展してきた歴史を遡るとよくわかります。

そもそも人類が生物学的に生き残ってきたのは、他者との共同生活を始めたからです。人間は元来一人では生きられない生き物でしたが、集団行動で他者と行動を共にすることで、効率的に生き残る術を会得したと言われています。例えば、集団でいるときに動物や他の部族などの襲来があったとき、他者の目の動きで相手がどっちを向いているか判断して危険を回避するなど、人間は他人の動作から意図を汲み取る能力に長けています。