首都圏で強盗事件が相次いでいる。どうすれば被害に遭わずに済むのか。龍谷大学矯正・保護総合センター嘱託研究員の廣末登さんは「犯人たちは意外な手口であなたの家の資産情報を探っている。うかつに他人にその情報を知らせないことが大事だ」という――。(第1回)
強盗傷害事件が起きた千葉県白井市の住宅=2024年10月16日
写真提供=共同通信社
強盗傷害事件が起きた千葉県白井市の住宅=2024年10月16日

強盗犯たちがターゲットを選ぶ3つの方法

関東で相次ぐ強盗事件。2カ月あまりの短期間に、犯行は14件、逮捕者は少年を含む30人以上にのぼる。

今回の事件では、2023年の首都圏を中心に全国各地で発生した広域連続強盗事件、通称「ルフィ事件」同様、殺人に至ったケースもある。多くの事件で、住民を粘着テープで緊縛したり、連れ去ったりと、凶悪な犯行が目に付く。

強盗を起こす犯人たちは、手当たり次第に民家に押し入っている訳ではない。当然、「金目のものがある」家を物色して強盗に入る。ターゲットの選定に際して、犯行側にはおおきく3つの調査方法がある。

それは、①闇名簿に基づくもの、②犯行前の調査に基づくもの、そして、③ターゲットを知る人物からの密告である。

特殊詐欺や強盗をする上で、重要な役割を果たすのが闇名簿だ。この名簿はさまざまな種類があり、その価値によってランク付けされているという。

過去複数回にわたり、筆者は闇名簿などの流通に詳しい元暴力団や半グレに取材している。その一部をご紹介しよう。

※筆者註 取材対象者の特性上、複数人から得た情報を「取材先」が語っているように構成している。何卒ご容赦いただきたい。

1件あたり1万円で取引

――いつから名簿をやり取りするようになったのか。

【取材先】名簿がカネになるようになったのは、特殊詐欺が始まってからじゃないですか。昔は、名簿なんか捨てていました。パソコンの中の名簿なんか普通に放置されていました。

しかし、これがカネになる現在ですと、わざわざ名簿を盗みに入る者も出てきた。名簿は、貴金属や現金と違って、セキュリティーの甘いところに保管していますから、盗みやすい。さらに、盗まれても、被害者は(個人情報取り扱いの杜撰さを)お客に責められるから、被害届を出さないんじゃないですか。

(ルフィ事件)のターゲットは、名簿からチョイスしたと思います。ただ、現時点では、この名簿の質はわからないし、入手先も分からない。

――名簿はいくらなのか。

【取材先】闇名簿はピンキリで、サラピン(一度も犯罪に使われていない)は値が張ります。詳細な名簿なら1件あたり1万する場合もある。一方、使い古された名簿(通称「出がらし)は、1件300円、500円と安くなる。おそらく、ルフィ事件で使われた名簿は、金を持っている、家に入ったら金がありそうな家の名簿を使ったと思います。