SNSの「闇バイト」をきっかけに犯罪に手を染める若者が後を絶たない。龍谷大学矯正・保護総合センター嘱託研究員の廣末登さんは「闇バイトの罠は非常に巧妙になっており、『うちの子に限って』というのは通用しなくなっている。困ったときはすぐに警察に相談してほしい」という――。(第2回)
暗い部屋でノートパソコンを開き、スマートフォンを使用している人の手元
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闇バイトで逮捕された少年「無我夢中で殴った」

筆者は、法務省更生保護就労支援事業所長や保護司に加えて、ノンフィクション作家の立場で、複数の闇バイト従事経験者と面談してきた。

闇バイトで逮捕された人に「捕まると思わなかったのか」と問うと、「捕まるかどうかは五分五分と思ったが、(闇バイトを)途中で辞められなかった」という趣旨の回答が多く、一度入ったら辞められない闇バイトの怖さを痛感している。

中でも、実際に「タタキ(=強盗)」に従事した少年(犯行当時17歳)に聞いた話は、筆者に少なからず動揺を与えた。それは、犯罪現場で求められる刹那の判断をリアルに語ってくれたからだ。以下、その少年との会話を紹介する。

――どんな仕事を請け負ったのか。

【少年】俺らはタタキをやらされました。ターゲットの店の社長が、夜間に売上金を持って帰るから、それを奪えという指示を与えられました

――暴力も辞さずに奪取しろということか?

【少年】はい。俺はタタく役割じゃなかったんですけど、タタく(役割の)奴が、現場でブルっちゃって(怖くなって)タタけなくなった。すると、指示役と繋がっている電話で、「代わりにお前がやれ」と言われて……。そこからは、無我夢中で殴りました。

奪った金は全部持ち逃げした

――相手は何歳くらいの人?

【少年】そうですね……。60代か70歳くらいじゃないですか。

――殴ったらどうなった?

【少年】一発で倒れました。すると、運悪く通行人が居て、近づいてきました。そこで、とっさに(被害者を介抱しているていを装い)、「大丈夫ですか」と声かけしながら、バッグを奪いました。人が集まりだしたので、混乱に紛れて逃げました。

――金は指示役に届けたのか?

【少年】いえ。事前にカネは500万円あると言われていたのですが、150万円ほどしか入っていなかった。これじゃあ、分け前も少なくなる。リスク犯したのは俺なんで、全額持ち逃げしました。

――捕まると思わなかったのか。

【少年】半々ですね。でも、指示役の(電話の)プレッシャーが半端ないんで、現場に行ったら無我夢中ですよ。

身長は170センチほど。やせ型で筋肉質ではなく、犯罪をしそうには見えない容貌の少年は、防犯カメラの映像で特定され、後日逮捕された。犯行時少年だったこともあり、保護処分を受け少年院に送致された。