闇バイトで逮捕された少年「無我夢中で殴った」
筆者は、法務省更生保護就労支援事業所長や保護司に加えて、ノンフィクション作家の立場で、複数の闇バイト従事経験者と面談してきた。
闇バイトで逮捕された人に「捕まると思わなかったのか」と問うと、「捕まるかどうかは五分五分と思ったが、(闇バイトを)途中で辞められなかった」という趣旨の回答が多く、一度入ったら辞められない闇バイトの怖さを痛感している。
中でも、実際に「タタキ(=強盗)」に従事した少年(犯行当時17歳)に聞いた話は、筆者に少なからず動揺を与えた。それは、犯罪現場で求められる刹那の判断をリアルに語ってくれたからだ。以下、その少年との会話を紹介する。
――どんな仕事を請け負ったのか。
【少年】俺らはタタキをやらされました。ターゲットの店の社長が、夜間に売上金を持って帰るから、それを奪えという指示を与えられました
――暴力も辞さずに奪取しろということか?
【少年】はい。俺はタタく役割じゃなかったんですけど、タタく(役割の)奴が、現場でブルっちゃって(怖くなって)タタけなくなった。すると、指示役と繋がっている電話で、「代わりにお前がやれ」と言われて……。そこからは、無我夢中で殴りました。
奪った金は全部持ち逃げした
――相手は何歳くらいの人?
【少年】そうですね……。60代か70歳くらいじゃないですか。
――殴ったらどうなった?
【少年】一発で倒れました。すると、運悪く通行人が居て、近づいてきました。そこで、とっさに(被害者を介抱している体を装い)、「大丈夫ですか」と声かけしながら、バッグを奪いました。人が集まりだしたので、混乱に紛れて逃げました。
――金は指示役に届けたのか?
【少年】いえ。事前にカネは500万円あると言われていたのですが、150万円ほどしか入っていなかった。これじゃあ、分け前も少なくなる。リスク犯したのは俺なんで、全額持ち逃げしました。
――捕まると思わなかったのか。
【少年】半々ですね。でも、指示役の(電話の)プレッシャーが半端ないんで、現場に行ったら無我夢中ですよ。
身長は170センチほど。やせ型で筋肉質ではなく、犯罪をしそうには見えない容貌の少年は、防犯カメラの映像で特定され、後日逮捕された。犯行時少年だったこともあり、保護処分を受け少年院に送致された。