運に恵まれ成功する人と普通の人の違いはどこにあるのか。脳科学者の西剛志氏は、「脳のパフォーマンスが重要だ」と語る。脳の状態を整え幸運を引き寄せる、7つの習慣を紹介する。

「運がいい」と思い込むと本当に運が良くなる理由

「自分は運がいいと思いますか?」

私がこれまで出会ってきた成功者たち――経営者やトップアスリート、各界で実績を残している方々――にこう問いかけると、驚くほど多くの方が迷いなくこう答えます。「自分はすごく運がいいんです」と。

彼らは謙遜してそう言っているわけではありません。本心からそう信じているのです。一方で、なかなか芽が出ない人や、不運が続いていると感じている人は、「自分はなんて運が悪いんだ」と嘆いています。

かつて私は、科学者として「運」という言葉をどこか懐疑的に見ていました。運なんてものは確率論にすぎず、脳科学で扱える領域ではないと考えていたのです。しかし、脳機能とパフォーマンスの関係を研究する中で、一つの明確なロジックが見えてきました。

成功とは、必要な場面で最高のパフォーマンスを発揮し、望む結果を残すことにほかなりません。成功者たちは「自分は運がいい」と思い込むことで脳のパフォーマンスを最大化させ、成功という結果をたぐり寄せている。彼らは運がいいから成功したのではなく、運がいいと思い込むことで脳の状態を整え、高いパフォーマンスを発揮した結果、成功したのです。

なぜ「運がいい」と思い込むだけで、パフォーマンスが変わるのでしょうか。私たち人間は、常に何らかの前提(プレサポジション)を持って生きています。「自分はこういう人間だ」「この状況はこうなるはずだ」という無意識の思い込みが、脳の働きに強力なバイアス(偏り)をかけているのです。

この力がどれほど大きいかを示す、心理学の有名な実験があります。トロント大学などの研究チームが行った、年齢と記憶力に関する実験です。

一般的に、年を取ると記憶力が落ちるというのは常識だと思われています。しかし、実験結果はその常識を覆すものでした。研究チームが、高齢の方々に単語を記憶してもらう際、「これはただの心理実験です」と伝えて実施したところ、若者とほとんど変わらない高いスコアが出たのです。

一方で、全く同じ内容のテストであるにもかかわらず、「これは記憶力のテストです」とはっきり伝えてから実施すると、高齢者グループのスコアだけがガクンと下がってしまいました。

能力そのものが衰えていたわけではありません。「自分は年寄りだから記憶力が低いはずだ」というネガティブな前提がスイッチとなり、脳が本来持っている力を発揮できなくさせてしまったのです。