言葉を変えるだけで見える世界が変わる
多くの人が、「運」とは天からランダムに降ってくるものであり、自分ではコントロールできないものだと信じています。しかし、精神科医として多くの人の悩みに触れてきた私の実感としては、運の良し悪しとは、その人がどこに意識を向けているかという「意識の向け方」の違いにほかなりません。
例えば、今日一日であなたに10個の出来事が起こり、そのうち5個が楽しいこと、5個が嫌なことだったとしましょう。運がいい人というのは、一日が終わるときに「今日は楽しかった」と、プラスの出来事を3つ思い出せる人です。一方で運が悪い人は、まったく同じ一日を過ごしても、「なんて嫌な日だ」とマイナスの出来事ばかりに注目してしまう。現実は同じでも、脳が何を探し出したかによって、その人が感じる幸福度、つまり「運がいい」という感覚は決定づけられるのです。
脳の注意を方向づけるハンドルとなるのが、私たちが普段使っている言葉です。言葉には、脳の認識をコントロールする力があります。「自分は運が悪い」と口にすれば、脳はその瞬間から「運が悪い証拠」を探し始めます。「やっぱりあれもダメだった」「これも失敗した」と、不運の検索を始めてしまうのです。逆に「自分は運がいい」を口ぐせにすれば、脳は日常の中から「運が良かったこと」を敏感に見つけ出し、記憶に定着させます。言葉を変えるだけで、脳が見る世界はガラリと変わるのです。
もちろん、わかっていてもネガティブな言葉が止まらないときがあります。それはあなたの性格のせいではなく、脳が疲れているサインかもしれません。睡眠不足やストレスで脳が疲労すると、脳の中で不安や恐怖を感じる扁桃体が過剰に興奮しやすくなります。扁桃体が興奮すると、私たちの脳は生存本能として、危険なことや嫌なことを優先的に探すモードに切り替わってしまいます。また、チャンスは万人に平等に降り注いでいますが、一瞬で通り過ぎていくものです。脳が疲労していると、瞬時の決断ができず、目の前のチャンスをみすみす逃してしまいます。「運が悪い人」の正体は、実は「脳が整っていない人」であることが多いのです。
ですから、運気をつかむための順序としては、まずはしっかりと睡眠をとり、脳のコンディションを「整える」こと。その土台の上で、ポジティブな言葉を選び、脳の注意をよい方向へ向けていくことが重要です。
では、具体的にどのような言葉を使えばよいのでしょうか。「不運を招く口ぐせ」と、「運を呼ぶ口ぐせ」について、シーン別に紹介していきましょう。
シーン① 残業したのに仕事が残っている
一日の終わり、息をついて「あー、今日も疲れた……」と口にしていませんか?
もしそうなら、あなたは自分で自分の運を下げています。
言葉というのは、脳の注意を方向づける役割を持っています。「疲れた」「できなかった」と口にすると、脳はその言葉通りに「疲れた理由」や「嫌な出来事」ばかりを探し始めます。
最悪なのは、これを寝る前に言ってしまうことです。脳の仕組みとして、寝る前に考えたことが、その人の記憶として一番定着しやすいことが証明されています。「自分ってダメだな」と考えて寝ると、ネガティブな思考で記憶が埋め尽くされていきます。これでは脳の扁桃体が興奮したままになり、翌日のパフォーマンスも下がってしまいます。
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