出会い運
「想定外の場所」で 運命の出会いを見つける

「出会い運」の神髄ジョブズに学ぶ

世間的に成功している人は、ほぼ必ず「自分は運がよかった」と言います。なかでも多いのが「人との出会いに恵まれた」と言う人たちです。

小野壮彦(おの・たけひこ)
小野壮彦(おの・たけひこ)
グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター。エゴンゼンダー社にてIT業界担当パートナーとして活躍。超ハイクラスの経営陣を対象としたヘッドハンターとして、のべ5000人以上の人材の目利きを行う。著書に『世界標準の採用』(日経BP)ほか。

ここで仮に「出会い運」なるものがあるとすれば、僕が思うに、それらはすべて「予期していなかった珍しい出来事」から発生するものです。

例えば、スティーブ・ジョブズの有名なエピソードがあります。アップルから追い出されていた時代、ジョブズはスタンフォード大学の昼食会で、たまたまノーベル賞受賞者である生化学者のポール・バーグと隣り合いました。

このときの会話から、ジョブズは「遺伝子組み換えのシミュレーションができるコンピューター」のアイデアを得て、大学向けのワークステーションを開発します。このビジネスが、後にアップルの経営に返り咲く布石になりました。

みなさんが想像する「出会い運」とは、まさにこのエピソードに象徴されているのではないでしょうか。自分の直線的な思考や限られた考え方ではたどり着けないものが、珍しい場所での珍しい人との出会いによって増幅され、クリエイティブな何かが立ち上がる――そんなイメージです。

そう考えると、運を引き寄せるには、こうした「珍しい出来事」をいかに頻繁に発生させるかがカギだということになります。

選り好みをしていてはチャンスはつかめない

ここで言う「珍しい出来事」とは何なのかを、もう一段深掘りしてみると、その条件は「アジェンダ(議題)が設定されていない」ということになるのではないかと思います。

例えば、会議のシーンを想像してください。普段は出てこないような意見が出て、思いがけない結論に達することができたとしても、それだけで「運がよかった」とは言いませんよね。

出会いについてもしかりです。本稿のテーマである「AIを出会いに活用する」という文脈で考えるなら、多くの人が思いつくのは、SNSや業界レポートをAIに分析させ、「今、自分のキャリアにとって最も重要なキーパーソン」をリストアップしてコンタクトを取る――といったアプローチなのではないでしょうか。これはこれでスマートなやり方と言えますが、いささか問題解決的すぎるというか、「アジェンダありき」なところが、「運をつかむ」という趣旨からは離れるように思います。こうしたやり方で得た人脈は、あくまで想定内の成果であり、せいぜい「出会いの効率が上がった」という程度にとどまっているからです。

むしろAIを使うなら、自分では絶対に思いつかないような「アウェイな環境」に自分を追い込み、そこの人々と「ノーアジェンダ」な状態で交流するために使うのがいいでしょう。自分のプロフィールや性格をAIに伝えたうえで「普段の私なら絶対に行かないが、行けば何か出会いや発見がありそうな場所やイベントを教えて」と指示すれば、具体的なイベントをディテール付きで提案してくれます。

(構成=藤田美菜子)