なぜ詐欺ではなく強盗なのか
警察庁の犯罪統計資料「刑法犯 罪種別 認知・検挙件数・検挙人員」によれば、2023年の強盗事件の認知件数は1361件(前年比18.6%増)で、検挙件数は1232件(前年比16.2%増)、検挙された人員数は1601人(前年比21.1%増)と、いずれも増加している。
特筆すべきは少年の検挙人員数で、その数は329人(前年比40.0%増)と極めて深刻な増加率となっている。
ちなみに、2023年の特殊詐欺発生状況は、認知件数1万9033件、被害額441.2億円と昨年に続き増加(それぞれ前年比で8.3%、19.0%の増加)となり、こちらも深刻な情勢が続いていることがわかる(警察庁「令和5年の犯罪情勢」令和6年2月)。
闇バイトは、「ルフィ事件」以降、犯罪色が濃くなっているようにみえる。2023年11月、台東区上野の宝飾店に3人組で押し入ったのは、18歳の少年と16歳の男子高校生だった。翌12月、埼玉県久喜市の住宅強盗では、16歳から18歳の男子高校生4人が、住人の女性を包丁やバールで脅して現金を奪っている。
強盗は、特殊詐欺と異なり、実行犯のトレーニングの時間が不要であり、今日募集して明日にも犯罪遂行が可能な犯罪ですから、犯罪の首謀者にとっては都合がいい。
少年の犯罪対策は、待ったなしだ。「うちの子に限って」「大都市圏だから事件が起きるんでしょ」などという無関心が犯罪を増幅させる。無知無関心は犯罪の温床となる。逮捕された時に、「闇バイトが犯罪とは知りませんでした」という言い訳は通用しない。
行きつく先は「社会的廃人」
昨今、闇バイト従事者が逮捕されると、初犯者でも一般予防の観点から実刑は免れず、多くの場合刑事施設に収容されている。少年でも18歳以上(特定少年)は、刑事事件として裁かれる。
元検察官は、闇バイト、すなわち、末端従事者の厳罰理由につき、次のように述べている。「受け子・出し子・掛け子は末端の利用される存在であるとはいえ、他方、特殊詐欺組織の中では受け子・出し子・掛け子があるからこそ犯罪が敢行されるから、役割の重要性は否定できず、厳罰の必要性は末端でも変わらない」と。
安易な闇バイト応募は、「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の一員となってしまう。そして、その先にあるのは、逮捕され、少年院送致や刑務所への収監。さらに、成人の場合は、釈放後も反社履歴(反社会的集団加入履歴)が付くので、半グレや準暴力団(トクリュウ)でなかったとしても、社会的制裁は変わらない。
反社履歴が付くとどうなるか。
口座が作れない、家が借りられない、携帯の契約が出来ない、就職もできないという状況に直面する可能性が高い。デジタルタトゥーが残れば、結婚すら難しくなる可能性が高くなる。だから筆者は、闇バイトの行きつく先は、「社会的廃人」になると警告し続けている。
闇バイトは、可能性に満ちた青少年の人生を台無しにする。簡単にお金は稼げない。犯罪は割に合わないという現実に気づいてほしいと思う。