天皇陛下の大叔母にあたる三笠宮妃百合子さまが11月15日、亡くなられた。生前に尽力された崇仁親王の自伝には、百合子妃による秘話が遺されている。宗教学者の島田裕巳さんは「皇族の伝記本というと堅苦しいものを予想するが、彬子女王が聞き手をつとめた『女子会』のようなオーラルヒストリーによって貴重な記録となっている」という――。
新年一般参賀に臨まれる三笠宮妃百合子さま=2020年1月2日、皇居・宮殿・長和殿のベランダ
写真=時事通信フォト
新年一般参賀に臨まれる三笠宮妃百合子さま=2020年1月2日、皇居・宮殿・長和殿のベランダ

「実の親を亡くしたよりも悲しい」

三笠宮家の百合子妃が11月15日、101歳で亡くなった。皇室の最年長だった。夫である三笠宮崇仁親王も100歳の長寿だった。

したがって、結婚生活は75年にも及んだ。結婚75周年は「ダイヤモンド金婚式」と呼ばれるが、現実にその日を迎えられるカップルが、いったいどれだけいるものだろうか。

三笠宮夫妻の間には5人の子どもがいて、そのうち女性2人は存命だが、3人の男性はすでに亡くなっている。長男の寛仁親王と次男の桂宮宜仁親王はそれぞれ66歳で亡くなり、3男の高円宮憲仁親王になると47歳の若さで亡くなっている。残念なことに、長寿の伝統は受け継がれなかったようだ。

百合子妃が亡くなった翌日からは、赤坂御用地の三笠宮邸敷地内で一般の弔問記帳がはじまった。そのことを伝えるテレビのニュースを見ていたら、取材を受けた弔問客のなかに、「実の親を亡くしたよりも悲しい」と涙ながらに語っていた男性がいた。

三笠宮崇仁親王の100年の生涯をつづった伝記

なぜ親の死よりも悲しいのか。その理由はテレビのインタビューでは明らかにされなかったが、それほど百合子妃を敬愛する人たちに、是非ともお勧めの本がある。

それが、吉川弘文館から刊行されている『三笠宮崇仁親王』である。これは、三笠宮の100年にわたる生涯をつづった伝記なのだが、そのなかには、第10章として「百合子妃殿下御談話」が含まれている。この談話は、2021年の3月3日から11月5日にかけて10回にわたって行われたものである。

ただ、読んで欲しいと勧めはするものの、一般の読者にはなかなか手が出せないかもしれない。なにしろ、『三笠宮崇仁親王』は1334ページにも及び、重さは2.3キロもあるからである。本には、分厚い「鈍器本」というジャンルがあるが、超弩級どきゅうの鈍器本であることは間違いない。

その分、本の定価も税込みで1万1000円である。学術書だと、それだけ高額なものも少なくないが、一般の読者が買うような価格ではない。公共図書館にも入っているが、重いだけに借りてくるのもかなり大変である。

「百合子妃殿下御談話」だけで、260ページあり、しかも二段組である。読みごたえは十分にある。一般の読者にはそう簡単に手に取ることができない本なので、ここでは、その内容を百合子妃の談話の部分を中心に紹介してみたい。