資本主義社会では、資本を持つ側と働く人では、当然非対称性がある。そんな中で、ともすれば、経営者は楽しく働けるけれども、会社で給料をもらって仕事をする楽しさには限界があると考える風潮がある。「社畜」という言葉は、それを象徴している。
確かに、現代で言えば、テスラやスペースXを経営するイーロン・マスクや、OpenAIを率いるサム・アルトマンは楽しそうに働いている。電気自動車や人工知能の最先端で活躍している姿を見て、あこがれる学生、社会人がいても不思議ではない。
しかし、だからと言って、誰もが起業すればいいとか、スタートアップをやればいいということにはならない。「みんながスティーヴ・ジョブズになればいい」というようなノリのインフルエンサーも時々いるが、実際には不可能なことは誰でもわかっている。
全員がスタートアップをやったり、社長になるようでは、人間のコミュニティが崩壊する。会社で給料をもらって、誇りを持って働くのも立派な人生である。「君も、社畜はやめて、ジョブズになりなよ」とみんなに言うような人が、「意識高い系」と揶揄されるのは仕方がないだろう。
では、どうしたら、社員として働くうえでも、楽しさを最大化できるのだろうか? 自営業や経営者も大切だが、会社員としての人生ももちろん良い。資本主義社会では、資本を持つ側以外は構造的に搾取されると言っても、働く楽しさは自分で守ることができる。楽しく働くにはどのようなマインドセットが必要かを考えてみよう。
楽しさというのは、脳の前頭葉による「解釈」のことである。同じことをしていても、捉え方次第で、楽しくもなるし、つまらなくもなる。
一つの鍵は、「他律から自律への翻訳」である。会社で働いていると、どうしても仕事の課題や締め切りが外からやってくる。上司が言ったからと、嫌々ながら働いていたら、当然楽しくない。
前頭葉の働きで、業務という「他律」を、自ら選び、計画するという「自律」に翻訳することで、仕事の見え方はだいぶ変わってくる。
例えば、3日後が締め切りの仕事が突然降ってきたとする。「ああ、嫌だな、言われたから、仕方がないからやるか」と思うのではなくて、「私は、会社の中で役に立つというミッションの下、この仕事を3日後までにやると、自分で決めたのだ」と解釈し直すのだ。
締め切りに追われるのではなくて、前倒しで早めに終わらせてしまうのも、仕事を楽しむ秘訣である。「巻き」で終わらせて、その場で提出してもいいし、しばらく寝かせておいて、締め切りのちょっと前に提出してもいい。いずれにせよ、仕事に追われているという感覚ではなく、むしろ自らのペースで仕事に自律的に取り組んでいると解釈することで、日常の業務が全く違って見えてくるのだ。
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