相手国の動きで自国の最善策は変わる

人間は、本質的に「社会的動物」である。古来、思想家たちが指摘してきたように、人間は一人では生きられない。私たちは集団の中で生き、他者と協力し合うことで初めて文明を築くことができる。しかし、同時に存在する「人間同士の競争」や「国家間の競争」が、個人の努力や独創的な工夫を引き出し、知恵を結集させ、社会全体の生産力向上を導いてきたことも否定できない。

この「協力」と「競争」を数理的なモデルとして定式化し、科学的な分析の対象とすることはできないかと考えたのが、ハンガリーから米国プリンストン大学に移った稀代の天才、ジョン・フォン・ノイマンと経済学者オスカー・モルゲンステルンだ。その後、同じくプリンストン大学のジョン・ナッシュは、心の病と闘いながら、この「ゲーム理論」を非協力的な状況下での意思決定分析へと昇華させた。

私自身の学問的関心も、ゲーム理論が示す「各国の経済政策の相互依存性」に置かれてきた。国家が自国の利益を最大化しようと政策を打つとき、常に「相手の出方」を想定したゲームを行っていると考えられないかということだ。かつてロンドン大学のハリー・ジョンソンが、私の研究を評して「君の経済学は、チェスでこちらのナイトがこう動けば、相手のクイーンがどう動くかを解き明かす経済学だね」と言ってくれたとおりである。

(写真=時事通信フォト)
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