米国の経常赤字が当たり前である理由

ドナルド・トランプ大統領が掲げる「相互」関税という言葉ほど、実態にそぐわない表現もないだろう。名称こそ「相互」だが、実際には米国が一方的に押しつける仕組みにすぎず、そのやり方は大胆であり身勝手である。

米国は経常収支の赤字が続いていることを理由に「我々は不当に扱われている」と主張し、関税導入を正当化する。しかし、国によって「お金を今すぐに使うか、それとも将来のために貯めておくか」という価値観は異なっている。ある国は今の消費を最優先し、別の国は長期的な蓄えを重視する。こうした違いが存在する以上、各国の収支が自然と均衡するはずがない。

この点を理論的に明確にしたのが、シティグループのチーフエコノミストを務めた経済学者ウィレム・バウター氏である。彼は、早く消費したい国が、消費を後回しにできる国から借りるのは合理的で自然な行動だと説明した。つまり経常収支の赤字は「異常」でも「不公正」でもなく、国ごとの時間選好の違いに基づく経済の姿にすぎないのである。

(文=浜田宏一 撮影=石橋素幸 写真=時事通信フォト)
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