父親は「私の責任です」と自分を責めた
2021年10月、神奈川県立こども医療センターで、入院していた男児が術後5日目に死亡する事故が起きた。
以下は、ご遺族・父親の言葉である。
「報告書等でいろいろと公表されましたが、子供の容態が悪くなってきた時の看護師さんの対応や事故後の遺族対応についての実際はもっとひどかったです。でも子供が亡くなったのは付き添っていながらこのようなひどい病院と見抜けず、助けてあげられなかった私の責任です。天国にいる子供に会えるなら許してもらえるまで謝りたい。
苦しんでいる家族に手を差し伸べてくれた小川議員をはじめ県議会の方々、黒岩知事、首藤副知事、県医療局の方々には本当に感謝をしております。今後、私たちのように苦しむ人が出ないよう病院改革をお願いいたします」
息子さんに術後付き添っていた父親の悔しい、悲しい気持ちが痛いほど迫ってくる。
私が2024年3月の県議会の厚生常任委員会で読み上げた、このコメントは、病院側との示談が成立する前だったので、県とこども医療センターの運営主体である神奈川県立病院機構(以下、機構)に対する遺族の配慮が感じられる。本当の気持ちはこの数十倍の悔しさと私は推測している。
隠蔽体質と医療ガバナンスの欠如が明るみに
この死亡事故を巡っては、術後に発症した発熱や下痢、嘔吐などの症状に対して適切な対応を行わず、心肺蘇生を始めるタイミングを逸したこと、さらに経験の乏しい医師に患者管理を任せていて院内のコミュニケーションが不十分だった、といった問題点が指摘されている。
また、院内で調査報告書を作成していたにもかかわらず、私が県議会で指摘するまでその存在を明らかにしなかった。この報告書全文を情報公開請求した新聞社と私に対し、機構が大部分を黒塗りで開示したのだ。
2023年度の1年間、私が県議会でこのような隠蔽体質や医療ガバナンスの欠如を追及し続けた結果、こども医療センターの病院長は降格、懲戒処分になり、機構理事長の交代を含む機構人事の刷新もなされた。このような大規模な人事交代は、2010年4月に地方独立行政法人に移行して以降、初めてのことだろう。
しかし、こども医療センターや機構が抱える問題はこの死亡事故に始まったことではない。そして、現在も改善されたかと問われると疑問符が付く。本稿における私の指摘を「県立病院というだけで、頭から信用してはいけない!」という警告として受け取ってほしい。