楽天グループが5年ぶりに営業黒字
楽天グループ(以下楽天)が2024年12月期の連結決算発表で、営業損益で529億円の利益を計上して(前期は2128億円の損失計上)、5年ぶりに営業黒字となったと発表しました。これは同社がモバイル事業に参入した20年決算以降、初の営業黒字となります。
また、24年12月にはモバイル事業のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)ベースでも、初の単月黒字23億円の利益を計上しました。モバイル事業そのものは、依然として2353億円の営業赤字ですが(前年同期は3358億円の営業赤字)、ひとつのマイルストーンに到達した楽天の経営努力はすばらしいと思います。
何よりモバイル契約数の伸びは注目に値します。全回線契約数(BCP含むMNO、MVNE、MVNOの合計)は、2024年1年間で177万回線増加して830万件に達したといいます(2024年12月末時点)。回線数とともに収益改善の鍵となるARPU(契約者あたり月平均収入)については、24年第4四半期で2856円、12月単月では念願といえる3000円を超える3019円となって、発表ベースでは明るい材料目白押しの決算となりました。
まだまだ安心できる決算内容ではない
ただこれで楽天に明るいバラ色の未来が開けたのかというと、それは少し違うという印象です。というのは、まず楽天の24年12月期決算には一部特殊要因といくつかのギミック的な要素が含まれているからです。最大のトピックとなった営業黒字化ですが、その中身を見てみると、楽天が出資する米国の通信衛星サービス会社ASTスペースモバイルが、決算上で持分法適用会社から外れたことに伴って時価評価をし直し、約1000億円の評価益を計上したことがその一要因になっているのです。営業利益は529億円であり、これがなければ24年12月期も営業赤字が続いていたのです。
またモバイル事業のEBITDAベースでの単月黒字23億円についてですが、ここには楽天ならではのギミックがあります。楽天は、モバイル事業の利益に契約者がグループの他のサービスを利用した際の利益の一部を算入するという、独自の計算方式を突如24年11月から導入しました。詳しくは以下ARPUの説明で触れますが、これが今回モバイル事業の利益かさ上げに寄与しています。
加えて昨年12月の「楽天モバイル最強感謝祭」と銘打った各事業での割引やポイントアップ施策実施による、Rakuten Linkの広告収入増加分も計上しており、期末に向け駆け込みで単月黒字化を演出した感が漂っているのです。