「親子丼」の読み方は「おやこどん」なのか「おやこどんぶり」なのか。NHK放送文化研究所の塩田雄大さんは「どちらで読んでもかまわないが、『おやこどん』と読む人の方が多いようだ。特に20代と30代ではその傾向が強い」という――。

※本稿は、塩田雄大『ゆれる日本語、それでもゆるがない日本語 NHK調査でわかった日本語のいま』(世界文化社)の一部を再編集したものです。

親子丼
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「親子どん」か、「親子どんぶり」か

Q 漢字で「親子丼」と書いてあったら、「おやこどん」と読んだらよいのでしょうか。あるいは「おやこどんぶり」と読んだほうがよいのでしょうか。
A どちらで読んでもかまいませんが、「おやこどん」と言う人が多いようです。

漢字を使う目安は「常用漢字表」というものをもとにするのですが、これは国が定めています。1981(昭和56)年に定められた常用漢字表には、「丼」という字は含まれていませんでした。どういうことかと言うと、この「丼」の字は学校教育で教える必要がなく、また新聞や放送でも基本的に使わないということになっていたのです。そのため、マスコミでは、「親子どん」または「親子どんぶり」という書き方をしていました。

その後2001(平成13)年に、新聞社・放送局が加盟する日本新聞協会で、常用漢字表に含まれていない「丼」などの漢字39字をマスコミとして独自に使用することに決めました(なお常用漢字表はその後2010(平成22)年に改定され、現在のバージョンでは「丼」も含んでいます)。そしてNHKでも、2002(平成14)年度の放送から、「親子丼」という書き方をすることができるようになったのです。

「~どん」と言う人は20代と30代に多い

2001年におこなわれたNHKの放送用語委員会で、「丼」の字を採用するにあたって「どんぶり」「どん」の2通りの読み方をすることが承認されます。このとき、次のような考え方が示されていました。

「丼」には「どんぶり」と「どん」の2つの読みが認められたが、「たまご丼」とあった場合は両方の可能性がある。用語班の考え方は、容器としての「丼」は「どんぶり」のみ、また料理名は原則として「~どん」を第一とし、「親子丼」など、前に付くことばが省略形でない場合は「~どん」「どんぶり」の両方を認めようというものである。(『放送研究と調査』2002年3月号、p.99)

具体的に考えてみると、「天丼」「うな丼」は「てんぷらどんぶり」「うなどんぶり」を略したもので、「天どんぶり」「うなどんぶり」とはなりません。また「牛丼」や「かつ丼」(「ネギトロ丼」「ロコモコ丼」……)も、「牛どんぶり」「かつどんぶり」と言う人は、あまりいないように思います。

一方、「親子丼」や「鉄火丼」などの場合には、「~どん」「~どんぶり」の両方が使われています。ただし、この2つも実際には「~どん」と言う人のほうが多く、特に20代や30代ではその傾向が強いようです。

今回は丼の話だけに、分量が多すぎてしまったかもしれません。おそまつさまでした。